2005年11月28日月曜日

てんちょおのワタナベさん

  『てんちょおのワタナベさん』は、記念すべき『まんがタイムきららコミックス』(現在は『まんがタイムKRコミックス』)の第一冊目であり、今から考えれば、この出版こそが偉大なる第一歩、ジャイアント・ステップであったのだと、しみじみ胸に兆すものがあります。『まんがタイムきらら』誌は、当時まだ充分に発見されていなかった萌え四コマを開拓すべく発刊され、それまでの、マニアやおたくのなかでもさらにコアな連中にしか見いだされていなかった四コマを、おたく的領域における重要なジャンルとして確立させるにいたりました。表面的にはマニアやおたく向けチューンを施すことで、しかしその底層では四コマの語法を拡大させることに寄与しました。発足した当時は萌え四コマといわれたこれらジャンルは、そのエッセンスをオールドスタイルに逆流入させるまでに成長し、そしてこの記念碑的第一号コミックスとなった『てんちょおのワタナベさん』は、本日発売された第三巻をもってめでたく完結です。

思い出します。『てんちょおのワタナベさん』が出版された当時、私はこの漫画を購入するかどうかで煩悶し、購入すればきらら系の支持、見送ればきらら系の不支持を表明するに同じであると、内心そんな風に思っていました。とはいっても、実際にはそこまで悩んだり深く考えたりすることはなくて、せっかくきらら系のコミックスが出るのであるからと、ご祝儀包むつもりで買いました。そして、これがきっかけとなったのか、その後私の四コマ系コミックスの購入には歯止めがなくなり、どれくらい買っているかは、このBlogでの記事をご覧になれば推測も可能なのではないかと思います。

『てんちょおのワタナベさん』が出た当初のきらら誌と、今のきらら三誌を比べれば、驚くほどの違いがあって、知らぬ間にこれだけの時間が経ったのだと、不思議な気持ちにとらわれます。『てんちょおのワタナベさん』のころには萌え四コマと呼ばれたこれら四コマですが、今では萌え四コマという表現はしなくなり、当時は新ジャンル開拓の最先鋒であったように感じた『てんちょおのワタナベさん』も、穏当なオールドスタイルの空気を感じるさせる少し古風な漫画と感じられます。

ここで勘違いして欲しくないのですが、古びたといってるわけではないのです。知らぬ間に、ずいぶんと遠くにきたのだなとそうした感慨がいっぱいで、移行期を担ったこれら四コマ漫画たちはその仕事を実によくはたしましたと、お疲れさまと、ねぎらいたい気持ちでいっぱいです。

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