Sous le soleil exactementは映画Annaの挿入歌で、私の愛するシャンソンでもあります。ヒロインであるアンナが、想像の中、海岸で、本当の太陽の真下といってこの歌を歌うシーンは本当に感動的で、間違いなく映画の中核に位置する場面です。この場面で、この歌で、果たしてなにをいわんとするのか。私はここに、ありのままの自分でいられる場所への思慕を感じ取ったのですが、あるいは実際はたいした意味などなかったのかも知れません。
この歌にうたわれる太陽の真下を、ありのままの自分でいられる場所というように感じたのは、他の誰でもなく私自身が、ありのままの自分をもって生きたいと切望しているからであろうと思います。映画におけるアンナの境遇、 — 思い人が自分に向けている視線の乖離を思えばあながちこの感じ方も間違いではないと思うのですが、1966年に撮られた映画の一シーンが、すでに二十一世紀を迎えた今にもなお訴えうるというのはすごいことであると思います。本当の自分と、本当からはかけ離れてしまった自己像のせめぎあいというのは、近代的自我における悲劇だなんていわれたりなんかもして、そういうのなら、私は未だ近代を抜け出すことができずにいるのでしょう。
私はこの歌を、映画のサントラと『恋物語』というアンナ・カリーナ名義のアルバムで持っているのですが、サントラの寂しげに美しさが広がりすこやかに叙情の高まる版と、『恋物語』に収録された人懐こさが見え隠れする版、どちらもが好きで、これを聴くとなんかしんみりとして、ちょっと泣きたくなる。けどその反面、微笑みたくもさえあるのです。
涙は、悲しいからではなく、寂しいからでもなく、なんかやっと思いが通じたような嬉しさがあって、けれどその嬉しい気持ちの裏に皆が共有する孤独なんていうのも知れるように思うから、どうしても複雑な表情を作らないでいられなくて、けど私は泣かないんです。きっと泣かずに、目を閉じて、なんかしんみりとして歌の中に沈んでいこうとするのです。
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