2005年11月1日火曜日

COOL JEWEL

高校の時分から通っていたレコードショップが閉店することになって、店じまいの二割引セールがおこなわれました。その時、私はまだ学生で、自由にできるお金も少なかったのですが、これはもう祝儀だと思って、店内にあるサクソフォンのアルバムを全部買って、それらは今も私の大切なコレクションとしてCD棚に収められています。

このとき買ったアルバムは、どれもこれも何度も何度も聴いて、それほど好きではないというものもありましたが、中にはかなりのお気に入りになったものもあって、ですが行きつけの店が閉まるというのは、大きな出来事でありました。今から考えると、あの時が、私の音楽に対するスタンスの変化の始まりだったのではないかと思います。

あの時買ったサクソフォン絡みのアルバムで、一番好きだったのはなにかというと、本多俊之の『COOL JEWEL』でした。いや、過去形じゃない。今も好きです。

ぱっと聴いた感じには、なんかそっけない感じで、メロディも単調な感じで、本気でやってんのなんて思ったりもするのですが、ところが、これが癖になるのですよ。ジャンルでいえばフュージョンで、スタイルとしてはミニマルっぽいのかな? シンプルなフレーズが何度も繰り返されて、気付けば忘れられなくなってしまっていて、これは本当に愛聴の一枚でした。

なんでこの曲を思い出したのかというと、今日iPodが選曲した音楽で、ちょっとしたミニマル風味を目指したというのがあったのですが、それが聴くに堪えなかったからなのです。いったい何分やってるんだ、と思って時間を確認したら、五分ほどの曲なのです。ですが、延々何十分もやられているような気がして、飛ばしちまおうかと思ったけど、後一分くらいで終わるからと思って我慢しました。けど、その一分が長かった。もう終わりだろうと思っても、たった三十秒しかたってなくて、本当につらかった。

この曲を聴いて、やっぱり本多俊之のセンスというのはすごいのだなと思いましたよ。単調な感じなんだけど、本当に単調というわけではないのです。そっけない風だけど、本当にそっけないわけじゃないんです。いつしか耳に残るフレーズ、心に引っかかる癖、風合いがあって、こうしたものはよっぽどじゃないと出ないのだなと、本当に思います。

けど、私が好きだという『COOL JEWEL』、絶版なんですね。ちょっと残念です。

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