2005年11月5日土曜日

あたしンち

 『あたしンち』は、日本のよくある家庭を描いて、その描写が妙に的確だから、ああそんなこともあるなあ、あったなあと共感しきりです。昔、私にはスイスからの留学生に知人があったのですが、彼女もいっていました。私のうちとおんなじだって。

けらえいこは国境を越えたと、あの時は本当に感心しました。いや、けらえいこがというよりも、母親というものの普遍性かも知れません。母親というのは、日本だとかスイス、ヨーロッパだとかの地理的状況を超えて、どうも同じようなものであるのですね。それも、『あたしンち』に出てくる母親というのは典型的な日本のおばさんであるわけで、ところが彼女の証言に基づくならば、ああした人は世界中にいるわけか……。

母親というのは偉大であると思いました。

母親の習性が普遍性を持つというのなら、きっと姉や弟においても同じなのではないかと思います。といってもだ、けらえいこは女性であるし、『あたしンち』にしても、基本的には橘家の長女であり姉であるみかん視点に基づく漫画であるわけだから、ここに出てくる姉というのはおおむねわたしであるわけです。つまり、この漫画における弟ユズヒコは、姉の目でもって観察された弟であるということなんです。

きゃー、この漫画は姉に見せちゃいかんわ。あ、ここでいう姉っていうのは、私の姉のことです。

ユズヒコは中学生で、だんだん子供から男っぽくなりはじめる時期にありがちな行動が描かれてるんですよ。大人ぶってみたりもするし、なんかわけわからん衝動にかられて暴れたりもするでしょう。身体においても精神においても、子供の部分と大人の部分が角突き合わせてアンバランスな時期で、それを姉の目がじっと見ている……。

ああ、こっぱずかしいわ。きっと姉がこれを見たら、私が中学生だった頃のことを引っ張りだしてきて、あれこれいいやがるぜ。だから、この漫画は絶対に姉には見せちゃならんのです。

いや、母でも一緒だな。この漫画は、私個人のものとして隠匿したいと思います。

  • けらえいこ『あたしンち』第1巻 東京:メディアファクトリー,1995年。
  • けらえいこ『あたしンち』第2巻 東京:メディアファクトリー,1996年。
  • けらえいこ『あたしンち』第3巻 東京:メディアファクトリー,1997年。
  • けらえいこ『あたしンち』第4巻 東京:メディアファクトリー,1998年。
  • けらえいこ『あたしンち』第5巻 東京:メディアファクトリー,1999年。
  • けらえいこ『あたしンち』第6巻 東京:メディアファクトリー,2000年。
  • けらえいこ『あたしンち』第7巻 東京:メディアファクトリー,2001年。
  • けらえいこ『あたしンち』第8巻 東京:メディアファクトリー,2002年。
  • けらえいこ『あたしンち』第9巻 東京:メディアファクトリー,2003年。
  • けらえいこ『あたしンち』第10巻 東京:メディアファクトリー,2004年。
  • けらえいこ『あたしンち』第11巻 東京:メディアファクトリー,2005年。
  • 以下続刊

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