疑似家族とか疑似親子とかそういうジャンルはかなり昔からあって、いったいなにがこんなにも引きつけるんでしょうね。私の好きなWeb漫画サイトに蛸壺堂というサイトさんがあるのですが、ここではその名もずばり『擬似親子四コマ』という漫画が公開されています。『疑似親子四コマ』第一話における著者のコメントはなるほどと思わせるものがあって、ちょっと引用してみたいと思います。
擬似親子というものが好きです。
血縁ではなく愛情で繋がっているけれど、本当の親子とは違って、どこか危ういものをはらんでいるのが。
この危うさにこそ魅力があるのでしょう。外部からの働きかけによって壊されてしまうかも知れない。あるいはうちに抱かれた波乱がすべてをひっくり返してしまうかも知れない。ですが、こうした脆さを意識しつつ、それでも関係が壊れてしまわないようにと願うところに、人間の本性が見えるのだと思うのです。
だから私も、いうまでもなく、疑似親子もの、疑似家族ものは好きで、『蛸壺堂』に公開されている漫画(特に私は『強制同居人』が好き)もしかり、そして久世番子の『imp!』にしてもしかり、でありました。
『imp!』は、二人の大学生のもとにやってきた、人間の子供そっくりの生き物メロウを軸に繰り広げられる疑似親子もので、メロウの子エバをめぐるストーリーをしっかりと組み上げながら、二人の学生の問題をあぶり出すことに成功していいます。彼らの問題は、ともすれば私たちにも通じるものでありまして、だから彼らに訪れる変化は、読者にとってのカタルシスでもあり得ようかと思います。実際私にとってはザークのテーマは切実で、欲しくてたまらないと思いながら、手にすることのできないものがこうして描かれて、私の魂はいくらかなぐさめられたように思ったのでした。
しかし、こうした疑似家族、疑似親子というモチーフは、少女漫画の系列にはよく見ますが、少年漫画のラインではあまり覚えがありません。少年漫画だと、親子や家族というよりも、押し掛け女房型になることが多いように思います。
ですが、私は押し掛け女房よりも疑似親子ものの方がはるかに好きです。疑似親子といわれて筆頭に浮かぶのは『ぼくの地球を守って』におけるラズロとシオン。最近では『サクラ町さいず』、そして『よつばと!』あたりにも疑似親子っぽい雰囲気は漂っていて、こういう関係がはらむ微妙で難しい距離と、でもこの関係を壊したくないという思いが私には心地よいのです。
- 久世番子『imp! 〈インプ!〉』(Wings comics) 東京:新書館,2004年。
引用
- 「擬似親子四コマ」第1話,『蛸壺堂』
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