2005年9月7日水曜日

LOVE ME DO

 そりゃあ、ジョージさんがいけないよ。甘やかすだけ甘やかして、はなっから小娘にうまくあしらわれて — 、でもこっちのジョージさんはそのことに気付いてるんですよね。『痴人の愛』の河合譲治に比べたらこっちのジョージさんの方が卑屈さがなく、それは現実感が希薄だからなのか、あるいはジョージさんもそこはかとなく黒い要素を持っているからなのか、ともあれ『LOVE ME DO』は悲壮感が少なく軽くできてて、さらっと読めるよい漫画だと思います。

『痴人の愛』の譲治さんと『LOVE ME DO』のジョージさんの一番の違いは、自分の妻に対する割り切り方の違いにあると思うんですよ。『痴人の愛』だと、譲治はナオミを美しく賢い女性に育てて、しかもそれを自分の支配下に置いておきたかったというもくろみがあって、まあそのもくろみは見事破綻して、奔放な女の支配下に置かれてしまうわけで、だから譲治からしたら望まぬ関係であったわけです。

ですが、『LOVE ME DO』だとそうじゃないんですね。ジョージはアイを育てようなんて頭はまるでなくて、ただアイが可愛いから、とそれだけしかない。はじめからこういう関係になることを諒解しているわけです。このへんの割り切りのよさが、ジョージさんから悲壮感を消し去っている大きな要因なんだと思います。

『LOVE ME DO』はヒロインのアイが、お手伝いロボ(犬型メイドロボ)のモンちゃんや、隣人のハナにゃん、レモンくんらと、毒吐きながら淡々と流れていく変わるところのない日常、というか、その会話を楽しむ漫画といったほうがらしい感じがします。だから、四コマの基本は起承転結だ、それ以外は認めないとか考えている人には向かないかも知れません。なにげにひどいこといってる、そういう様と会話を、だるく楽しむのがこの漫画の読み方でありましょう。

こういう漫画ですから、適当に手に取って、適当に開いたところから読みはじめて、飽きたら適当に閉じる。こういう読み方が普通にできる漫画というのも、日常のなんでもない時間をゆっくり過ごしたいときには必要で、だから『LOVE ME DO』は私にとってはちょっと特別なタイトルになっています。

『LOVE ME DO』は、長く『まんがタイムきらら』誌の巻末に位置して、読み疲れを軽く締めてくれる漫画として、非常にいい仕事をしてきたと思います。『LOVE ME DO』にたどり着いたら、ああ読み終わったという気にしてくれる。なんとなく締めてくれる。だから『LOVE ME DO』がなくなったら、きらら誌の読後感は大きく違ってしまうだろうと思います。

  • 新条るる『LOVE ME DO』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2004年。
  • 新条るる『LOVE ME DO』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。

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