2010年5月21日金曜日

ADAMAS

 ついこのあいだ、『PEACE MAKER』の新刊が出て、やっぱり皆川漫画は面白いなあ、そう思っていたら、なんと今日は『ADAMAS』4巻の発売日だったというのですから驚きです。加えていえば、『ウルトラジャンプ』6月号の表紙も『PEACE MAKER』。なにか、皆川亮二周辺を盛り上げようという、謎の組織の暗躍でもあったのでしょうか。というか、『ウルジャン』表紙は単行本の宣伝だろ、といわれれば、はいそのとおりかと存じます、そう答えるほかないのですが、しかし出版社をまたいでの皆川攻勢、なかなかに興奮させられました。

というわけで、『ADAMAS』、戦う女性のかっこいい漫画であります。宝石の助けをかりて、超常的な力を得るヒロインたちが続々と登場してきて、今や3人、といいたいところだけど、どうも4人になりそうな気配ですね。ええ、第4巻ではその4人目、サエコ・ミレイが登場。クールな美人、魅力的! というのだけれど、気を抜くと朧に見えてしまう。ああ、『スプリガン』の朧ですね。そうしたところもまた皆川漫画の楽しみで、皆川節とでもいいたくなる表現の現れてくるところに、待ってました! 拍手喝采で喜びをあらわす、そんなところがあるのです。

さて、『ADAMAS』4巻、これ、面白かった。最初にヒロミのエピソード。これがまたえらくシリアスな話題取り上げまして、児童虐待をテーマに、少年の成長ものとほのかな恋愛を絡めた、短いエピソードながらもぐっと訴えるところのある、いい話でありました。「ミッドナイトブルー」に関しては、サエコ・ミレイの顔見せエピソードという色が強いのですが、ここでの展開を受けて次のエピソードがはじまるといったところ、それでまたこのエピソードがシリアスなトピックを扱っていまして、外国人労働者についてですね。そしてそこに絡んでいくのがエスメラルダ。なかなかに意外な組み合わせですが、読んでいくと、これが意外でもなんでもなくて、むしろ彼女の素直さ、人のよさというものが発揮された、そんなエピソードであったのですね。

そして、思うのですが、皆川亮二の漫画は、いつだって常識はずれの超常的能力を持ったヒーロー、ヒロインが活躍する、そんな感じなのですが、しかしじゃあ普通の人は助けられるばかりの脇役なのかというと、決してそうじゃないんです。それはエスメラルダの活躍が光る「ジャスパー・ウィスパー」、これにおいてもそうで、エスメラルダがすごいのは間違いない。けれど、そのエスメラルダのそばにあって、彼女に負けない存在感を保ち続けていた社長、この人がまたかっこうよくってですね、エスメラルダもすっかり惚れ込んでしまう、そして私も、素晴しいなと思って、いや、もうほんと、普通の人の頑張るその姿にかっこよさがにじみでています。そうした、普通の人だって格好いいんだ! というところ。まさに皆川漫画だなと思って、すごく気にいったのでした。

  • 皆川亮二『ADAMAS』第1巻 (イブニングKC) 東京:講談社,2008年。
  • 皆川亮二『ADAMAS』第2巻 (イブニングKC) 東京:講談社,2008年。
  • 皆川亮二『ADAMAS』第3巻 (イブニングKC) 東京:講談社,2009年。
  • 皆川亮二『ADAMAS』第4巻 (イブニングKC) 東京:講談社,2010年。
  • 以下続刊

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