『まんがタイムきららフォワード』2010年7月号、発売でした。表紙、『空色スクエア』。深雪でいいのかな。ポータブルプレーヤーで音楽を聞きながら横になっているお嬢さん、こちらを見る目の深い青、そして流れる髪のあでやかさにはどきりとさせられる、そんな魅力的なイラスト。落ち着いた感じもあって、いとおしいと感じさせるものもあって、これはよいなと思います。
『S線上のテナ』、シリアスな展開を受けて、皆の協力がこの苦境を越えさせる、そんな展開になるのかと思っていたのです。大切なものがある。その大切なものを前に、グロリアが、オスティナートが、テナが、そして恭介が助けあうことで、乗り越えるのだと思っていたのですね。でも、驚きました。思っていた以上に悲痛な選択が描かれた。そしてその選択に殉じようとするグロリア、ああいいシーンであるなと思って、けれどあまりにも悲しすぎるよなと思った。そこに、もうひとつの選択肢を提示する。ああ、うまいなと思ったのでした。悲劇的な状況に、ひとつの光明が見えるような気がした。もしかしたら、これ以上の不幸はないのかも知れないと、すくわれた思いのする、そんな展開に打たれました。
『夢喰いメリー』、実にいい感じです。これまでの展開、男の子が状況を打破しようと頑張って頑張って、そして騎兵隊到着とあいなって、けれどまだ最後のピースが足りてない! というところ、今回、その最後のピースが埋まるのですね。追い詰められ、そしてヒロインの本領発揮。ああ、しびれます。こういう展開には、しびれてしまうようにできているみたいです。
『少女素数』、新学期、そしてクラス替え。あんずと離れてしまったすみれの様子が心配になるような回。新しい人間関係、女子のグループ、影響力のある女子堀切文愛を中心にして、 そのとりまきたちはすみれを快く思っていないかも知れないけれど、あやめはどうも興味津々といった様子。そして、ちょっとした諍い。戦争が当たり前という男子連中に、震えながらも自分の思いをぶちまけるというすみれの姿には、ちょっと感動させられるものがあって、そして反省させられました。
すみれは、世の中に対するシニカルな態度を前にして、それであなたたちはなにをしているのか、そう問い掛けるのだけれど、対するすみれはなにをしているのかというと、祈ってるよ…
。バカじゃないか、それがいったいなんの役にたつ、そういう思いを持つ人もあるかも知れない。知れないけれど、でもこの人はただ祈るだけでなく、望まない状況を肯定するかのような意見をうけて、それは違うと、勇気振り絞って声をあげたんですね。最近では、空気だなんだといわれることが多い。そこからはずれた言動が非難される傾向にある。けれど、空気とやらが読まれることで、望ましくない状況に向かってどんどん傾いていく世の中、その動きが見過ごしにされることも多いのに、この人はしっかりと抵抗して見せたんですね。
現実は過酷だけれど、その状況に、まあけしからんよね、と斜に構えて傍観していれば、それは過酷さを増す現実に加担しているだけなんだ。けれど、すみれという子は、そうした消極的な加担でさえも許せないのか。はっとさせる側面を見せて、凛々しく、それはこの上もなく魅力的な姿でありました。
『据次タカシの憂鬱』。この漫画は、いつもは掲載された回全体を通して、ひとつの流れを描くようにしていますが、今回は四コマ一本あるいは数本といったスパンで完結する、そんな小ネタが光っていました。私はいつも思うのですが、たまにはこういう回があってもいいなって。とんとんとんってテンポよく読める。印象は軽くなるけれど、四コマならではというべきでしょうか、小気味よい、そんな感触がとてもよかったです。
四コマで展開しながら、その回を通した流れを読ませるタイプの人は、今や珍しくはないけれど、一年に一度とか半年、数ヶ月に一度とか、こうした小ネタを集めてみましたというのがあってもよい。そう思っています。もしかしたら、ストーリーにまとめる際にこぼれおちてしまったネタの再利用なのかも知れない、そんな気もしないでもないですが、でもこういう再利用なら大歓迎。面白かったです。
- 『まんがタイムきららフォワード』第4巻第7号(2010年7月号)
引用
- 長月みそか「少女素数」,『まんがタイムきららフォワード』第4巻第7号(2010年7月号),235頁。
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