2008年5月4日日曜日

S線上のテナ

   『S線上のテナ』は『まんがタイムきららフォワード』で連載中の漫画、作者は岬下部せすなであります。岬下部せすなというと、先日書いた『ふーすてっぷ』の作者、つまり同月に単行本が二冊出ているんですね。こうした傾向見ますと、人気があるんだなあと推察されて、確かに私もこの人の漫画は好きだから、嬉しいこと、ありがたいことだと思います。といいながら、これまで『S線上のテナ』については一度も書かなかった。連載でも読んでるし、単行本も買ってるんですけどね。なのに書かなかったのは、書こうとしてもなにを書いたらいいかわからんかったからなのです。そして今、やっぱりなに書いたものかわからず、この先どうしようと弱っています。

このなんともいえん感、原因はわかってるんです。この漫画の設定もろもろが音楽をベースにしているという、それが私にとっての引っ掛かりになっていて、例えば登場人物の名前は音楽用語や楽器をもとにしているであるとか、そして命の譜面を調える力を持った調律師たちという設定。主人公は駆け出しの音楽家恭介。彼のもとに調律師テナが現れたところから話は始まったのですが、恭介の持つ特殊な譜面を巡り繰り広げられる調律師たちの攻防に巻き込まれるかたちで、恭介は普通の世界から調律師たちの世界へと導かれていく……。とまあ、こんな感じの話であります。

そして私はこれを読む時に、音楽に関するもろもろを遠くに追いやりながら読んでいます。いや、名前が気になったりはしないんです。いや、そうでもないか。ともあれ、音楽をネタのベースにしているものだから、いろいろ音楽絡みの用語やらなんやらが出てくるのですが、その度にそれらのバックグラウンドやらもろもろがばばばっと思い出されてきて、ああ、もう、うるさいうるさい、今は関係ない、って追い払いながら読んでいるわけなんです。おかげで、どうにもこうにも楽しみにくい。こういうたとえが妥当かどうかはわからないけれど、昔のハリウッド製ニンジャ映画を見ようとする時にですね、日本や忍者に対する知識が邪魔をすることってありました。けど、あれらは別に現実の日本を描く映画でないからそれでいいんです。同様に、『テナ』も音楽を描く漫画でないのだからこれでいいんです。瑣末な、枝にもならない部分に引っかかることなく、漫画の本筋を読めばいいんです。

と、わかってはいるんですが、どうしてもつまずく。もうこれは仕方ないんかなあと、へこたれそうになりながら読んでいます。ことに私は没入して読むタイプの人間ですから、引き込まれる前に引き上げられるというのは実につらいもので、おかげでなにを書いたらいいかわからないということにもなってしまって、ああ、これはもう仕方ないんでしょう。などいいながら、仕方ないながらもつくづく残念と思われてなりません。

  • 岬下部せすな『S線上のテナ』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 岬下部せすな『S線上のテナ』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 岬下部せすな『S線上のテナ』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 以下続刊

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