2008年5月15日木曜日

雑学おもしろ読本 — つい他人に話したくなる

またやっちまいました。コーヒーでも入れようと湯を沸かしている待ち時間、今日とりあげる本を探しにいったらですよ、またまた『コンシェルジュ』を読んでしまいました。だから、時間がないんだってば。なのに止まらない。ああ、もうだめだよ。さて、その探していた本というのはなにかといいますと、『雑学おもしろ読本』というもの。これ、子供のころに好きで読んでいたものなのですが、タイトルにもそうあるように、雑学、今でいえばトリビアですか? をとにかくたくさん詰め込んだ本です。出版が1981年6月、うちにある本は同年11月の第20刷。半年で20も刷りを重ねたのですから、ちょっとしたヒット作だったのでしょう。話題だったのかも知れません。なので、父は自分が読むために買ってきたのでしょう。で、それを息子にとられた。そんなところだと思います。

私が今日この本を取り上げようと思ったのはなぜかというと、万年筆のインクに関係する話が載っていたからです。そのインクというのはブルーブラック。書いた時には青いのに、時間が経つと黒くなるというインクですね。いやね、昨日のことなのですが、梅田の紀伊国屋で『ボーテックス』の茶軸を買いましてね、そうしたらインクカートリッジは何色にしましょうなんて聞かれたのです。黒と青とブルーブラックから選べるというじゃありませんか。おお、てっきり黒に決まってるものと思っていたら、嬉しい気遣いでありますよ。ううーん、どうしようかなあ、と悩む間もなくブルーブラック。いやね、私は古い人間なので、万年筆のインクというとブルーブラックなんです。けれど、ただ古い人間だからブルーブラックというわけでもないのです。

この本の影響なんですよ。万年筆なんて使ったこともなければ見たこともなかった子供時分に、まずは知識としてもたらされたブルーブラック。それはどんな記述だったかというと — 、ちょっと引用してみましょうか。

ブルー・ブラックとはどんなインク?

 これは青インクと黒インクの中間の色ではありません。ブルーブラック・インクで書いた文字は、書きたてのころは青い色をしていますが、時間がたつにつれて、だんだん黒に近い色に変化していきます。つまり、時間とともに青から黒に変化するのでブルーブラック・インクというのです。このインクの製法は次のようなものです。タンニン酸水溶液に硫酸第一鉄を加えると、タンニン酸第二鉄の黒い沈殿ができます。これに、その反応を抑える硫酸を加えて青い色素で色をつけます。書いた直後は、青い色素の色ですが、水分が蒸発するにつれて反応が進み、黒いタンニン酸第二鉄の色が現れてきます。このため、インクの色が青から黒へと変わるのです。

子供心に、この色の変わるというインクは実に魅力的でありまして、しかもその後、これが公式に用いられるものということを知って、なおさら好きになった。だから、私が万年筆を使いはじめた大学のころから、メインのペンはブルーブラックと決めています。とはいえ、この化学反応を用いるタイプのブルーブラックは今では染料のものに取って代わられつつあって、いやね、私の使ってるのはParkerのQuink Blue Blackなんですが、それがどうも偽ブルーブラックに変わっているらしく、それ知った時にはショックでした。でもまあ、ブルーブラックは割とペンに優しくないインクですから(強酸性と沈殿物がペンを傷めます)、染料でもかまわんかあと最近では思うようになっています。別に私の書くものなんか、長期保存する価値ありませんから。冷暗所に保管して、あとで読めればそれで充分です。なんなら、写真でも撮っておけばいいし。

『雑学おもしろ読本』に、こうして書かれていたブルーブラックインクの話。もちろん私がこの本から得たものはこれだけではなかったのだけれども、とりわけ記憶に濃かったのがこれという話です。けど、実はちょっと外しているんです。というのはね、私はこの本に、お茶と錆びた釘を使って作るブルーブラックインクの話が載っていると思っていましたから、あれれ、意外、記憶がこんがらがってるや。私も衰えたものですよ。もう一冊の本というのは、ちょっと怪しげなネタも載っているもので、ナメクジがエクトプラズム吐いて河を渡る話とか、そういうオカルティックなものも紹介されていたような本で、あと、癇の虫の話ですね。子供の手に墨でちょいちょいとおまじないを書いて、なんだったか唱えると、にょろにょろと灰白色の物質が出てくるってんですね。わお、うさんくせえ! けど、そういうのも楽しかったんですよ。多分この本は、クローゼットの底に沈んでると思われます。だってこれらの本、こっちの家に引っ越してから、一度も読んだことがないんですよ。だから思い出したのをきっかけにして、また読んでみたい。余裕ができたらサルベージでもやってみるかなと、そんなこと思うのだけど、きっと余裕ができる日はこないから、見つけ出す日もこないものと思われます。

そうそう、実は手帳を買おうかと思っているのです。なんだい薮から棒にって話ですが、いやあ、さすがに私の異常な記憶力も陰りを見せていますから、大量の情報を扱うにはそうしたものの助けも必要になってきたように思われてですね、手帳が欲しいのです。まあ、実は、『コンシェルジュ』の最上さんや涼子さんの手帳、ファイルに憧れちゃってるからなんですが、とにかくあやふやになっていく記憶に頼るだけではいけません。情報をまとめてファイルする。そういう必要もあるなと、このところとみに思うようになっているのです。

目標は、脱コンピュータです。という話を職場でしていたら、係長が以前の職場でもらったという手帳をくださいました。いわゆるバイブルサイズのシステム手帳です。私はスケジュール管理にというより、雑駁な情報をまとめ整理するツールとしての手帳に期待しているので、大振りのA5サイズなどを思っていたのですが、はてどうしましょうか。バイブルサイズでも足りるといえば足りるでしょうし、いただいたものも悪いものではないし、けど実をいうと欲しいのがあったりなんかしてさ、しかもそれA5とバイブルそれぞれあるから、ああ、迷うね、迷うよ。

なお、いただいた手帳はこんなやつです。なんか使うのがもったいなくてですね、っていうのも変な話なんですが、ともあれもう少々迷ってみたいと思います。

Personal organizer

  • 『雑学おもしろ読本 — つい他人に話したくなる』東京:日本社,1981年。

引用

  • 雑学おもしろ読本 — つい他人に話したくなる』(東京:日本社,1981年),107頁。

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