家庭で作るブルーブラックインクについて書いてみようと、引っ張り出してきた本『雑学おもしろ読本』が外れだったというのは昨日書いたとおりであるのですが、じゃあ目当ての本はなんというものだったのか。どうにも思い出せずにいたのですが、今朝、歯を磨いていた時にぽっとタイトルが浮かびまして、『不思議がいっぱいの本』。そうそう、これこれ、そうなればあとはすぐですよ。この本は引っ越してきた当初こそは、かばんに入ったままクローゼットの奥に仕舞われていましたが、大学卒業時の大掃除によって書棚に移動させられたのでした。子供のころから使ってきた書棚の、一番下の段、本を二重に入れてある奥に入っているはずと思って見てみたら、ドンピシャですよ。ちょっとでも取っ掛かりができれば、ぞろぞろと思い出されてくる。ああ、私はまだまだ戦える — 。そう思って、少し安心して、けれど手帳は買うつもりでいます。
さて、せっかく本も見つかったことですから、目当ての箇所を読んでみましょうか。
お茶とクギで作る青インキ
万年筆に使う青インキは、タンニン、鉄分、青い染料、アラビアゴム、石炭酸などが混じり合ったものですが、どこの家庭にもある身近な材料を使って自家製青インキを作ってみましょう。その材料とは、でがらしのお茶と、錆びたクギです。色も香りも味ももうダメという、でがらしのお茶っ葉で出したお茶の中に、錆びたクギを五、六本入れておきます。二、三時間すると、次第にお茶は黒ずんできます。そうなったら、この液を筆につけて、白い紙に字を書いてみてください。立派な青インキができているはずです。
そうそう、これです。私の記憶の中では、もう一冊の内容とこんがらがってブルーブラックになっていましたが、こちらでは青インクとありますね。でも、茶に含まれるタンニンと鉄錆を合わせるんだから、ブルーブラックじゃないのん? その茶の黒ずみというのは、タンニン酸第二鉄じゃないのんかと思ったりもしますが、なにぶん私はこうしたところ、ちゃんとわかっていないので、これ以上は申しません。というか、ブルーブラックのブルーは染料だっていう話だったはずだから……。まあいいや。なんだったら、今度暇な時にでも実験してみましょう。お茶は普通にあるし、あとは錆びた釘を調達ですね……。って、そんなのあるかなあ。改めていわれると、錆釘なんてないですよ。
この本は、基本的には手品であるとかトリックであるとかを紹介して、余興やなんかで試してみてくださいというような、そんな趣向の本です。トリックには科学的なものがあったかと思うと、とんちや錯覚を利用したものなど、あるいはいんちきまがいのものまであって、実に楽しいのですが、そんな小ネタ集の合間合間にはさまれるコラムが面白いんですね。基本的に雑学コラムです。影絵や映画、奇術師などにまつわる逸話があったり、パズルや言葉遊びが紹介されて、そして結構オカルトも出てくるんです。昨日いっていたナメクジがエクトプラズムを吐いて小川を渡る話は131ページに、癇の虫については181ページに収録されていて、いやあ、胡散臭い。他にも念写やテレパシーなどのESPや、ブラウン夫人、キルリアン写真なんかもあって、今ではすっかり否定されてしまったようなものもあったりするけど、まあ仕方ないよね。なにぶん古い本ですし、それに当時は、胡散臭いものを胡散臭いといって、笑い飛ばしてくれる雰囲気がありました。まず真っ当な大人は相手にしなかったですよね。そんな時代の本です。まったくの遊び、安心して胡散臭さを楽しむことのできる本だったと思います。
なお、この本は後に判型装幀タイトルを変え、講談社+α文庫に収録されたのだそうです。知りませんでした。中身がまったくそのままであるかどうかはわかりませんが、もとの版に比べると手に入りやすそうではあります。なにぶん古い本ですし、今あえて手にする意味はないかも知れませんが、けど小ネタが好きだという人にはよい本であると思います。
- 『不思議がいっぱいの本 — つい他人に試したくなる』東京:日本社,1983年。
- 『不思議がいっぱいの本 — つい他人に試したくなる』東京:日本社,1990年。
- 『ついやってみたくなる「不思議」の本』(講談社+α文庫) 東京:講談社,1997年。
引用
- 『不思議がいっぱいの本 — つい他人に試したくなる』(東京:日本社,1983年),306頁。
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