万年筆への興味、いまだ冷めやらず。とはいっても、ずいぶんと落ち着きはしたんですけどね。さてさて、最近の万年筆絡みの買い物はといいますと、インクであります。セーラー万年筆が出している黒インク、その名も極黒。これ、ちょっと話題になったので、文具マニア、特に万年筆に興味を持っている人なら聞いたことがある、当然のように知っている、あるいはもう持っていたりするんじゃないかと思うのですが、普通なら詰まるといって万年筆では忌避されるカーボンインクなんですよ。万年筆の機構上、カーボン系インクは粒子がペン芯に詰まる可能性のあるために、使ってはいけないものとされてきたのが、まさかの技術革新、超微粒子顔料、ナノインクを採用したことで万年筆でも使えるようになったというのです。
顔料系インクのなにがよいのかといいますと、耐水性、耐光性であろうかと思います。染料系のインクだとどうしても水に濡れると流れ、光にあたると色が薄れるという性質がついて回るようで、雨の日に届いた手紙、宛先がぐしゃぐしゃになっていただとか、昔の書き物、文字が色あせて読めないであるとか、そうしたことにもなりかねません。ですが、カーボンインクだとそうした悲劇を回避できるというのですね。なにしろ墨みたいなものですから、ちょっとやそっとのことで消えません。
実験してみました。セーラーの極黒と、うちにある万年筆用黒インク二種の耐水性を確かめるべく、書いた文字を水にさらしてみました。
結果は一目瞭然です。極黒は起筆終筆あたりにこそ多少の色の流れが見られますが、目立ったにじみは皆無。たいしてPilot黒、Parker Penman黒は見事に流れています。これは勝負にならんなあ、なんて思いながら、けれど染料と顔料というのはもともとこうしたものでありますから、比較するほうがおかしいって話であるかも知れません。
さて、私が極黒を買ったのはなぜかといいますと、ペンでスケッチをするためなのです。といっても私が描くのではなく、母ですね。絵を描く母に、耐水性の高いインクがあるから試してみてはどうだと、安いペンでいいからコンバータを仕込んで、カーボンインクを使うといいだろうだなんていって、手持ちの余っていたPelikano Juniorを渡したんですね。そして結果は以上のとおり。ペンで描いたあとに、水彩で色をつけるなんていうのも可能。インクの乾きも速いしで、これは使えそうだという評価を得ました。
ただ、少々問題があるとすれば、多少のにじみが見られることでしょうか。線がにじむまではいかないけれど、水に濡れるとちょっとだけ濁りが出るんですね。おかげで色付けしたところが汚くなって、まあこれはそういう用途のものではないから仕方ないのかも知れませんが、なにに対しても万全ということはないのだと思わせる結果でした。
なお、その後ちょこちょこ調べてみたところ、絵を描くような場合にはプラチナのカーボンインクがよいらしく、極黒に比べてなお一層の耐水性があるのだとか。ただ、耐水性に優れるということはペンを詰める可能性が高まるということでもあるから、実は私はこれらインクを使いたくない。おそらく絵を描くこともないだろうから、私がこの二種のカーボンインクを自分のペンに入れるということは、この先もちょっとないだろうと予想されます。
極黒のインクとしての書き味は、なんというか、油のようなぬめりがあって、独特です。自分のPelikano JuniorにはPelikan Royal blueを入れているのですが、これだと紙をこする感触が指に伝わるのに、極黒は擦過感がまったく消えて、ぬーっという感じで線が引かれます。面白いなあ。なんて思うけれど、さっきもいった理由から私はカーボンインクは使いません。いや、絵を描くために使ってもいいかも知れない……。とはいっても、毎日ギター弾いて、字の練習して、写真も撮って、ここに絵を加えるとなったら、いよいよ時間はなくなります。なので、正直ちょっと無理。絵を描きたいと思う気持ちはあっても、それを実現する余裕がもうありません。
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