眼鏡を外すと美少女というのはよくよく見られる設定ではありますが、眼鏡を外すと女子高生になるというのは斬新というか、他に類を見ません。かくしてこの漫画『はっぴぃママレード。』は、世にも珍しい眼鏡を外すと女子高生になる主婦がヒロインの漫画であります。というか単に女子高生というスタイルに非日常性を求めるさなえさんが、普段の自分らしさを感じさせる眼鏡というアイテムを忌避しているだけ、であるような気もするのですが、まあそんなことはどうでもいいことです。36歳の子持ち主婦が、かつて病弱であったために断念せざるを得なかった高校に通いたいと、息子の通う学校に入学、クラスメイトになってしまったことからはじまるドキドキコメディ四コマ、それが『はっぴぃママレード。』であります。
しかし、36歳で16歳に溶け込んで違和感がないというのは、とてつもないことであるなあと。クラスの男子をとりこにし、担任教師を惑わすばかりか、実の息子をさえドキドキさせてしまうその魅惑。てえしたもんだ。と感心しながら、実際この漫画の魅力の根っこには、ヒロイン相羽さなえのキャラクターがあると思っています。成績は悪く、どちらかといえばおっちょこちょいの悪乗りするたちで、けれど前向きで明るく、楽しむことに関しては貪欲、イベント大好き、食べるの大好き、女子高生でいられる限られた時間をフルにエンジョイしようとしていることが伝わってくるような、その前のめりの姿勢はやっぱり素敵だと思うのですよ。それでもってあの外観 — 、とかいっていますが、私は女子高生相羽さなえより、主婦相羽さなえの方が何倍も好みであります。
登場人物は相羽さなえの家族、息子武史と父(夫)丈史、高校クラスメイトでは大崎茉莉花に三田がいて、あとは養護教諭の吉村華子、茉莉花の兄巧弥くらいでしょうか。この中では武史と三田がぱっとしないものの、というか普通なんですが、あとは妙に個性強めで、そうした主張の強いキャラクターがどたばたしているのを見るのが楽しくて、こういうところ見ていると、ストーリーないしはイベント重視というよりもキャラクター主導型。けどキャラクターにこそ魅力があるから、これがよいのだと思えるそんなバランスです。それぞれのキャラクターがもっているネタのパターン、それを繰り返しながら、関係が深まるにしたがって、新たなネタの派生が見えてくる、そんな感じ。けど、ただネタを見たいのではなく、見たいのはキャラクターの関係性なのかなと、さなえと華子のふたりを見ていると思えてきます。最初は対抗心むきだしだった華子だけど、だんだんさなえに取り込まれたみたいになって、そうした様子は純粋に見ていていいなあと思うものですから。
和をもって貴しと為す、仲良き事は美しき哉、そうした言葉もあるように、和気あいあいとした雰囲気、それがなによりと思います。そして、こうした四コマに求められているのは、仲良きことであるのかも知れないと、個性を少しずつ違えたものが仲良くしているという、そういうところがうけるのかも知れないと思うのですね。とすると、この漫画の、年齢も世代も違うもの同士が育んでる友情ってのは、なんだかすごくいいものであります。
- 北条晶『はっぴぃママレード。』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。
- 以下続刊
2 件のコメント:
北条晶さんのHPに貼ってあるブログパーツ(「ママレード」と「お父さん」の両方が置いてあります。クリックするとでかい声でしゃべるので注意です。)ものすごく出来が良くて驚きました。外注したのかな……? とか思ったりして。
あ、北条晶さんのはどちらの単行本も買ってないです。最近買った4コマというと「乙姫各駅散歩」くらいです。
ブログパーツ、見ましたよ。あれは驚きます。私はまんがタイムWeb経由で知ったので、ずっと芳文社が作らせたものだと思っていたのですが、どうも違うみたいですね。モーションポートレート株式会社のモーションポートレート技術ってのを使っているそうで、マウスカーソルに追随して動く頭の滑らかさがきもちわr、素晴らしいですね。いや、本当にすごい技術だと思いましたよ。思ってるんですよ。
『乙姫各駅散歩』に関しては、Blogで書いていらっしゃいましたよね。もちろん拝見してます。
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