この漫画がはじまった時、まさか後にアニメ化するだなんてまったく思いもしなかったどころか、そう長くないんじゃないかなどと失礼きわまりないことを思っていたのが懐かしい。そうなんですね、自分にはあまりピンとこなかったのです。ちょっと硬めの絵、表現はどことなくこわばった印象をあたえたものですし、描かれる内容にしても特に真新しいものでなく、だからどうだろうと思っていたら、私の見立てはいつだって外れますね。人気が出たのですよ。表紙を取るようになり、さらにはアニメ化されて、限定版だって出ました、アンソロジーだって出ました。はあ、すごいねえと私は感心して、確かに面白かったものなあ。そう思いながら、実は今なにをどう書いたらいいかわからなくて困っています。
今日、これを書こうと思って、単行本3巻のシュリンクを外したのですよ。つまり眠らせてしまっていたということなのですが、連載時に読み、そして単行本になった時に、同時発売される他のものを差し置いてまで読もうとは思わなかったということなんです。読んで見て、面白いなと思うんですが、それならそれを思ったままに書けばいいのに。なのにそれをしない。どう書いたらいいかわからないんです。私にとってこの漫画は、妙に感情移入を阻むところがありまして、変わり者、変態といってもいいのかな? ばかり出てくる漫画なんだけど、その彼らのおかしな言動がその瞬間瞬間に私をくすぐって笑わせてくれることはあっても、驚くほどにあとに残りません。この漫画と私のあいだには、なにか緩衝地帯とでもいえそうな隔たりがあるようで、近寄ろうにも近寄れない、そんな気がするんですね。
実をいうと、ジャスティスと星君が好きでした。二人はライバル? なのかどうなのか反発しあう仲で、変態っぽいんだけどあらゆる面で恵まれたジャスティスと、真人間からどんどん離れて駄目になっていく星君の対決にならない対決。駄目になっていくといえばヒロインのなじみや、なじみのライバル? かねるなんかもそうだけど、このどんどん駄目になっていくというのがいわば面白さの根幹かと思っていたら、なんだか妙にわかりやすい決着をしてしまうんだなあ、そんな印象が残っていて、そうした展開からは、同病相憐れむ感じのやれやれ感、近しさよりも、なんかすでにできあがったものをあらすじで伝えられたような、かけ離れた感じしか得られなくて、なんだろうなあ、もっとのめり込む展開だったらよかったのかなあ。
と、ほら、こんな風になっちゃうから、書くに書けなかったのです。
序盤、同人を儲かる市場と勘違いして飛び込んで、目論見の外れたことを知るなじみ。あのころが、私には一番面白かった。だから、あの時に書いておくべきだったなあ、そんなこと思っています。アニメ化の果てに抱き枕カバーまで出てしまった今、私にはあの時に感じていたことを思い出せず、つまりはなにを書いたらいいかわからない。むしろ今は、この漫画の対象とする層に私は含まれていないのね、と妙に納得した思いでいて、けれどこの流れについていけないことに、ちょっとした悔しさも感じているようだから、複雑なんでしょうね。
この感触なにかに似てるなと感じて、思い出したのが『おねがい朝倉さん』でした。かつて面白いと思ったけど今はなにか遠巻きにしているという感覚。けれど『朝倉さん』は雑誌まで買わせる勢いでしたから、それに比べれば『ドージンワーク』はずっとましではあります。けれど、理解されない、理解できないということは、どう言い繕ったとしても残念なことには違いないと思います。
- ヒロユキ『ドージンワーク』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
- ヒロユキ『ドージンワーク』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
- ヒロユキ『ドージンワーク』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年;限定版,2006年。
- ヒロユキ『ドージンワーク』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
- ヒロユキ『ドージンワーク』第4巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
- ヒロユキ『ドージンワーク』第4巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年;限定版,2007年。
- ヒロユキ『ドージンワーク』第5巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
- 『ドージンワークアンソロジーコミック』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
- 坂東真紅郎,ヒロユキ『ドージンワーク — 彼の愛情、彼女の欲望。』(芳文社KR文庫) 東京:芳文社,2007年。
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