私はいうまでもなくさだまさしのファンで、けれど、残念ながらそれほどレコードやなにかをもっているわけでもなく、その楽曲のすべてを網羅しているわけでもなく、でもそれでもさだが好きなのです。どこが好きなのかといわれれば、叙情性と滑稽味とが合わさって、けれどただ美しいだけでなくぐさりと突き刺すような透徹して鋭い詩の世界が音楽と拮抗して、そのせめぎあいと調和がさだの魅力なのであるかと思います。けれど、後年の曲にいたっては、より散文的な色合いを強めてしまって、そうしたほとんど散文といえるような歌詞で曲を書けるというのもすごいことなのですが、でも私は初期から中期にかけてのさだの、美しい詩情の世界がことさら好きなのであります。
さだの初期にはとにかく名曲がそろっていて、だから、そこからこれが一番好きという一曲を選ぶというのは非常に困難なことなのですが、でもそんな中、好きな曲がありますかと問われたら、即座に答えられる曲があります。それは『道化師のソネット』。哀しみに沈む友人、女性に向けられた歌でありましょうか。ともすれば哀しみに押しつぶされそうになる人生の折々の曲がり角に、あなたを助け、支えることができるというのなら、僕は道化師にだってなれるという告白。人生の哀しみは誰にでも訪れることがわかっていて、その哀しみがいつかいやされる日もきっとくるだろうということもわかっていて、ならばその日を迎えるための支えになりたい。すごくいじらしく、すごく共感性に富んだ言葉の数々であるかと思います。そして、リフレインから歌い出されるメロディも強くそして美しく、私はこのような詩と歌の書けるさだという人の計り知れない才能と、そして才能に負けないくらいに繰り返されただろう努力、苦闘にひたすら恐れ憧れます。
さだまさし
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