2012年4月1日日曜日

アキタランド・ゴシック

 個性というのは、こういうものだと思うのです。『アキタランド・ゴシック』。北方に位置するとある県に暮らす少女たちの物語。メインヒロインに角のある少女、アキタちゃんをフィーチャーし、雪国アキタランドでの暮らしを描き出そうという意欲作です。町には懐かしさを感じさせる風景が広がり、また古来伝えられてきた伝統が色濃く残る、そうした土地での生活とはどういうものか。レトロと先端技術が同居し、そして名状しがたきものが普通に共存しているアキタランドの、なんだか妙にのんびりとして、楽しおどろおどろしい情景。ここに開幕です。

あとがきを読んで驚いたのですよ。もともとは『アキタランド・ゴシック』ではなかった。『季節の衰え』というタイトルで、普通の学園ものとして展開する予定だった。って、そのタイトルで普通といわれても困るんですが、ともかく担当氏の感想は、普通ですね、だったそうです。それは、当初の予想がよっぽどだったか、あるいは本当に普通だったかのどちらか……、って前者のような気がするんだよなあ。ともあれ、できあがってきたものは、ひどくおかしな日常もの。名状しがたきものが跋扈する、そんな土地で、なんだか不思議と共感できるあるあるネタに遭遇したり、見た目こそはアレでも、内容はといえば実に自然で普通の感情の動き。オーソドックスなカートゥーン的味わいに、独特のアキタランド的世界観がマッチして、ゆるやかに広がり、深く静かに浸透する、そして時に強烈なインパクトを残し、爆発的な面白さを見せつける、そんな物件に仕上がっているのですね。

しかし、第1回が角にできる虫歯の話、なるほどこれはメルヘンっぽいファンタジー世界の話になるのだな。そのように思わせて、第2回は資本主義の楽園ショッピングセンターにいって洋ゲーを買って熱中するという、いやいや、それ普通だから。って、普通でなにが悪いといわれたら、普通万歳です! って答えるほかないんですけど、普通と面妖、日常と幻想の綱引くバランスがすごくよくとれて、絶妙に引き合ってる。その傾向は第3回目にはっきり見えて、冒頭などは、なるほどフリーマーケット。普通の話かと思った。実際、導入こそはぎくりとさせる描写だけれど、外国の子供っぽいニュアンスでママにお願いするアキタちゃんに、なんだよ! フリマかよ! 安心させられて、そうかと思ったら後半怪異に突入しているという、この狭間感が素晴しい。読み終えるまで、一体今回はどのあたりのポジションにいるのか、そいつが判然としない。この曖昧の最中、確かなのはアキタちゃんたちのなすこと、出会い見て感じること、それらなんですね。しっかりとした感触を読み手に残してくれる。そのおかげで、不安なんてまるでなしに読み進めることができて、読み終えて、なるほど私たちはこうした道を進んできたのか、振り返って知って、なるほどと飲み込んですっきりする。その後味、読後感も確かで、さっぱりと晴れやか、あるいはにやりとシニカル。多様にして、実に豊かなのです。

ところでさ、アキタちゃんのいってたグミ・ベアーズってこれよね?

Haribo Gummi

これ、コンビニで見かけて、すぐさま購入して、すごい歯応え! 味もいいじゃん! すごく気にいったんですが、咀嚼しすぎて歯医者のお世話になることに……。いえね、歯が磨耗してるらしくって、噛みすぎるとしみたり痛くなったりするの。いや、ほんと、グミで歯医者と、アキタちゃんコースを逆にたどってしまいました。

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