2010年3月26日金曜日

『月刊アフタヌーン』2010年5月号

 『月刊アフタヌーン』2010年5月号、発売されました。表紙は『百舌谷さん逆上する』、なんだか妙にさわやかな笑顔うかべる百舌谷さんが印象的であるのですが、これよく見たら、鎖で繋ごうという絵なんだ。しかし、この漫画に関しては、こうした要素こそが求められているような気がします。とはいえ、ここ数ヶ月の百舌谷さん、番太郎に距離を置いてるから、こうした姿はむしろ少なくなって、かわりに困ってあたふたしている場面が増えた。なので、ちょっと久しぶり、といった感じでもありますね。

というわけで、『百舌谷さん逆上する』です。少し時間をさかのぼって、この数ヶ月、百舌谷さんがなにをしようとしていたかということが語られて、ああ、やっぱり、こうだったかと。前の学校で校長の資産を運用していたとか、また運動会の時なんかに、携帯電話をいじっている場面が描かれていました。それらから、おそらくは株の売買やってるのだろうと思っていたら、実にそのとおりでした。しかしそうして予想されることは作者も織り込み済みなのでしょう。うまくいきそうになった、目標に到達した、そう思ったところで、思いがけないしくじりがあって、そして新しい展開の芽が見えてくる。なんだか、不穏な空気感じさせる展開、新たに登場してきた人物の思惑もろもろ、どうなるのだろうと思わせるには充分な状況。ほんと、気をもたせてくれる、楽しませてくれる漫画です。

で、いいんだけど、番太郎も激ハードであるんですけど、会長ですよ、会長。あの挿入された一コマ、あれだけでもうなんというか、いろいろ耐えがたい、そんな厳しさが押し寄せてきて、もう、なんというか……。つらいっす。それから、くーたん。この人、ただのストーカーかなんかなのか、それとももしかして実の母親とか、そういうなにかなのか? いろいろな人の思惑入り乱れて、この混乱させられる感覚、篠房六郎の漫画を読んでいる! と実感させられて、すごくいいです。

『武士道シックスティーン』、磯山が怪我、戦線を離脱することとなって、代わりにと西荻を推すこの展開は、実に期待される、わくわくとさせるものであります。気弱といえばいいのか、どこか消極的な西荻が試合に引っ張りだされて、しかもその相手というのが実力者とくる。この逆境に、ついに勝ちを意識しだした西荻。期待や応援を背に、自分にできることをしっかりとこなし、さらに前へと踏み込んでいく。これは、いい。すごく面白い。ベタといえばそうかも知れないけれど、わくわくさせられる展開であること、それは間違いない。ええ、とても胸踊らせてくれる話でありました。

『ラブやん』は『追憶売ります』? けど、たとえこれがどんなに後ろ向きの楽しみであるとしても、効果があり、かつ安価ときたら、いってしまう人は続出するように思われます。私だって試してみたいと思うもの。思うようにいかない現実に打ち拉がれる日々を、一時忘れたい。それはラブやんならずとも願わずにはおられない、甘美な誘惑ではなくって!? しかしフサさんの妄想は酷いな。けれど、快楽にまっしぐらというその姿勢は見習うべきものであるかも知れません。でも、あんな姿を誰かに見られるのは躊躇するなあ……。いや、それを躊躇しないからこそ偉大なのか……。

『友達100人できるかな』、切ない話でした。第三の再来者、井森湯治の話。99人まで友達をつくりながら、100人目は作らないと宣言する。そんな湯治に主人公は興味をもって、つきまとって、そして互いに理解を深めていく。ここには、子供としての世界があり、しかし大人としての感情もあり、かつて得られなかったものを取り戻しつつ、未来に思いをはせる、そんな湯治の気持ちはひしひしと迫って感動的でした。あの、見開きの風呂、あの台詞、胸をぐっとつかむかのようでありました。そして去るということの意味を知って、切ない。けれど、その切なさを埋め、越えていこうとする、そんな強さ描かれて、ええ、やっぱり感動的なのでありました。いい漫画です。

0 件のコメント: