実は、発売日に買っていました、『晴れのちシンデレラ』。毎月の、KRコミックスの買い出しにいったいつもの書店、新刊の平積みの中にあって、なにか訴えかけるものがあって、でもなあ、無闇に買う本を増やしたくない、そんな気持ちもあって、迷って迷って、手にとっては戻し、またとっては戻し、お嬢様学校に通うお嬢様だけど根は庶民、そういう設定に『笑う大天使』思い出したりして、それゆえにひかれつつも抵抗がある、うろうろうろうろ売り場を回り、ええい、もう買っちまうがいいさ! やけっぱちな気持ちで買って、そして今日まで寝かせてしまったのでした。いやね、かなり面白いという人もあって、ならきっと面白いのだろう。Amazonのおすすめにもいつもあがっている、だからこの数ヶ月ずっと気にしてきて、けれどそれでもし自分の性に合わなかったらどうしよう。なにか怖れみたいなものがあって、けれど読んでみれば、ああこれ面白いな。心の底から思いました。というか、MOMOか。雑誌買ってもいいかも、そう思うくらいよかった。いや、もう、買い損ねなくてよかった。あの時の判断、そのぎりぎりの決断に我がことながら安堵しました。
そうした経験を積み重ねていくほどに、表紙買いと称した衝動買いが酷くなっていくというのですが、そのへんのことはどうでもいいので、パスしまして。しかし、この表紙、こちらに向かって駆けてくるお嬢様、晴さんですね、その印象のぱっと引き付けるところ、そこが決め手となったのでした。さて、私は以前表紙で買ったシリーズ、なんていって、自分の表紙買いの傾向について書いたことがありました。それは、いわく、こちらを見つめる表紙シリーズ。そう、『晴れのちシンデレラ』も見事その条件に合致しております。凛々しいお嬢さんが、こちらを真っ向から見つめている。あまつさえ、駆けてくる。実にいい。しかし読み終えて思う、もしこの駆けてくるハルさんを避けなかったら、きっと撥ねとばされてしまうんだろうな……。
この漫画のヒロインは貧困をともに育った春日晴さん。ひょんなことから大金持ちになってしまったけれども、根っからの庶民はいまだ抜けきらず、そうしたところはよくある設定であるかと思います。けれど、その庶民ハルさんが、どうもこうもなくいい人で、じいやさんやメイドのみそのさんの気持ちがよくわかる。ちょっとしたことに喜びをあらわにするハルさんと、その弟あたる。その素直なところ、人柄人品のよさには格別のものがあります。人懐こくて、どうもこうもなくひきつける。そればかりか、その喜びに、なにか共感できるものがある。ささやかな仕合せを、この上もない喜びとして受け取る春日姉弟の笑顔には、こちらもつい笑顔にさせてしまう力がある。うん、すごく身近と感じられる、その距離感がたまりません。
その距離感、親しみやすさがあるから、学校の皆からハルさんが慕われるという、そうしたところもすごく自然と感じられるのでしょうね。実際私も読み終えるころには、健気なお嬢様にすっかり絆されてしまっていて、けれどこの漫画の面白さには、そうしたキャラクターの持つ力だけではない、ネタのあちこちに光るものがあって、だってサンタクロースはまんまトントン・マクートだし(クリスマスの夜に悪い子をさらいにくる、麻袋おじさんの伝承を持つ地域は実在します)、しめじ…、モノクロ、もう最高。これらのネタの面白さは、ネタだけではなくキャラクターがあって光るものなのかも知れませんが、またキャラクターの魅力を引き出すのもこうしたネタの積み重ねであるわけで、いわば車の両輪として互いに作用しあいながら、漫画の魅力を高めているのでしょうね。
ところで、この漫画の見どころのひとつに、姉を慕う弟たちがあるように思います。実際、弟というものは姉を慕い、ああして力にもなれば、助けにもなりたいと思うものなのですよ。などという私は、現在理想の姉を探している最中です。あ、そうそう、素敵なお姉さんの話ですが、目撃者ゼロなら本気で戦える、って、あんたは変身ヒーローですか!? と思ったら、どうもその認識で正しかったみたいです。ついでに、実は、この表紙、あの絵のために、ハルさんのこと、ずっとツンデレ系のお嬢さんかと思ってました。とんだ誤解でありました。
- 宮成楽『晴れのちシンデレラ』第1巻 (バンブー・コミックス MOMO SELECTION) 東京:竹書房,2008年。
- 以下続刊
2 件のコメント:
おぉう、買われていたのですね。そしてうちの記事までチェックして下さっていたとはー。ありがたやです。もう見ていないのかと思っていましたw
晴れシン、凄く面白いですよね。記事の「ささやかな仕合せを、この上もない喜びとして受け取る春日姉弟の笑顔には、こちらもつい笑顔にさせてしまう力がある。」というくだりに大きく頷いてしまいました。
ええ、買っていたのですよ。買ったけれど読めていない。読んだけれど書いていない。そうした漫画も結構あるのです。
にゃんげつさんのBlogは拝見していますよ。滅多にコメントしないのは、私の引き込もり的性格のためです。自分の狭い視野では見落してしまうものも多いですから、助かっているんですよ。
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