2017年7月29日土曜日

『まんがタイムオリジナル』2017年9月号

『まんがタイムオリジナル』2017年9月号、一昨日の続きです。

『北斎のむすめ。』、お栄が自由でいかします。絵師の派閥いろいろ。もちろん栄は葛飾一門で、西洋画法友の会にも所属し、さらには堤派にまでやってきた。栄に背を押されて吉之助が入門したところなんですが、吉之助、うまいことやってるみたいですね。と、そこに栄がやってくる。最初は吉之助のこと心配して? そうかと思ったら、自分の興味が抑えられなくなったか、ぐいぐい食い込んでいって、体験、質問、なにごとも試してみるんだっていうその貪欲さ。すちゃらか、いい加減、気分屋、気まぐれ、そう見せてその根っこには絵に対する、表現に対する強い思い、意識があるっていうのが栄のかっこいいところだと思うんですね。吉之助、惚れちゃったかい? いやもう、栄、かっこいいから仕方ないよなあ。私は姉さんの方が好きです。

『カントリー少女は都会をめざす!?』。今日は花火大会。八重が浴衣着ましてね、いやもう可愛い。田舎だ田舎だいってますけど、花火大会とか、結構栄えてるのね。屋台もずらりと並んで、人出もたくさん。おお、結構賑ってるんじゃん。この人通りの多さ、けれど大河の地元、大阪ですよね、そこならこれくらい普通だって聞いてね、そしたら八重がえらいやる気になってるの。ほんと、都会というと人が変わりますね、この子。実にいいです。わかりやすくて。しかし今回のエピソード、花火大会だっていってるのに花火より都会の方が重大トピックになってるじゃん。ええ、ほぼ八重のせい。花火よりも眩しい笑顔。ええ、八重の魅力がこれでもかって発揮されてました。

『歌詠みもみじ』は高校野球の応援です。予選で準決勝までいっちゃった。それで全校生徒総出で応援っていうんですが、まりながほんと嫌そうで、千恵も結構嫌そうにしてて、ええ、当然もみじもですよ。でもほんと、これすごく気持ちわかる。私は吹奏楽部所属でしたからさ、駆り出されるんですよ。坂和ちゃんも一生懸命ラッパ吹いてますけど、それはそれは嫌そうで、うん、ほんと、嫌だったよ……。この作家がそうなのかなあ、日本の夏といえば高校野球、なにはなくとも高校野球、そういう野球第一主義みたいなものから距離を置いた姿勢。好感持つっていったらいいものか。しかしそれにしても、最終回に一打逆転のチャンス! って時に、これで勝ったら決勝でもまた応援に駆り出される、もみじたちが心底嫌な表情して見せるの、ほんと、おかしかった。けどまったく野球のこと悪く描いてるってことはなくて、先生の熱心な応援とかね、そしてラストの無常観に先生のさわやかな締め。ほんと、ネガティブ、シニカルが続いたその末に青春ものの味わいをそっと添える。皆も最初は嫌そうにしてたけど、もしかしたら勝てるかも、そう思った気持ちは嘘じゃなかったみたいで、それがいい読後感になっていたと思います。というか、そのさわやかな読後感、全部先生の落ちを際立たせるためか! ほんと、先生が最後に残念を全部背負っていってくれましたね。

『部屋にマッチョの霊がいます』。木葉、魅力的になったなあ! 今回は涼さんの視点から描写されて、弟の看病が大変なこと、それで皆に迷惑かけてるって思ってること、その心情に沿うようにして語られまして、ああ、自分がしっかりしないとって、それ、いつか折れてしまう予兆だ。どんどん涼さんが追い詰められていってるってわかるんですね。そんな涼さんのこと心配してる木葉の気持ちもよくわかる。でもどうしたらいいかわからない。そんな木葉に神奈子が言葉をかける。ああ、木葉、友達を作ったことがこの子の強さの芯になってる。ひとりじゃできなかったことが、神奈子がいたからこそできたんだなあ。あの木葉が涼に味方ですからって、頼ってくださいっていった時の描写、本当に素敵だった。ああ、この漫画は木葉が、そして涼も、人の繋りを得て変わっていく、そうした物語なんだなって思わされました。ああ、そうそう、クランチ20回をやってる木葉、めちゃくちゃ綺麗じゃないですか。ほんと、最高だと思う。アッコに、聞けよ! っていっちゃう木葉も、ほんとこの子、強くなりました。ええ、とてもいいことですよ。

  • 『まんがタイムオリジナル』第36巻第9号(2017年9月号)

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