2014年4月30日水曜日

女子のてにをは

 紀伊國屋書店のKinoppyには、新着図書のコーナーがあるのです。登録された電子書籍を一覧できる、いわば電子の平台でありますね。私はなるたけ本との出会いを逃したくないと、毎日これをチェックするようにしてるのですが、そこに現れたのが『女子のてにをは』。可愛い女の子ふたりの綺麗な表紙。ああ、これは昨今はやりの百合ってやつだね? いえ、違いました。第1話の半ばまで試し読みできたのは幸いでした。東山みどり。背中に届くその真っ直ぐの黒髪はまさに烏の濡れ羽色。女子からは羨望の、男子からはほのかな憧れの的だった — 。しかしその彼女が、突然その髪を切った理由とは一体!?

なんとですよ、試し読み、落ちの直前で終わりなんですよ! なぜ彼女が髪を切ったのか、それが明らかになる前に終わりなんですよ! なにそれ! 許せない! 買うしかないじゃない!

買いましたよ、読みましたよ、もう、めちゃくちゃ面白かったですよ。東山みどり。いいわ、この子。なんか思い切りよくて、あのいてもたってもおられなかった、そうした様子にこの子の胸の高なり、気持ちの躍動が溢れかえって、なんて瑞々しいのだろう! 感動すら覚えました。彼女の気持ちの昂り、それはうきうきと表情にあらわれて、そしてまた落胆も同様で、なんてチャーミングな人なのか。ええ、この漫画、出てくる女の子たちが本当の本当にチャーミングで、それもただただ可愛いは正義といった類ではなく、ひとくせふたくせある、ちょっとズレてたり、あるいはなにかノリノリだったりする、そうした個性の中に、肩肘はらない人の自由さ、時にあっけらかんとして、そして晴れやかな空、その高さを思わせる心地良さがある。自然なんですね。漫画です、フィクションです、作り事なんです。わかってるんだけど、彼女らひとりひとりに、この世界のどこかに笑って泣いて、楽しく元気に暮らしてそうな、ありそう感、どこかにいそう感がぴしっと通っていて、ほんともうたまらない。もうひきこまれるみたいにして読んでしまうんですね。

この漫画は、基本一回一回が独立した読み切りになっていて、第1話の彼女、東山みどりは第1話だけの登場です。1話あたり9ページという短い読み物、その短さで彼女らの個性、魅力を見事に描く、その手腕は確かなものであるなあ。ちょっと短い、そうしたところも、この漫画の魅力を支えています。テンポがいい、ぽんぽんとリズムよく展開するその小気味よさは、彼女らの足取りの軽やかさそのものであり、次へ次へとページをめくらせる、先を先を読みたくなる、そんな気持ちを後押しする優しくも強い力であります。1話を読み終える、ああ面白かった、そう思った気持ちはすぐに続く話にからみとられて、もう今日はこのへんで、そう思っていたはずなのに、とどまることなく目はページの先に向かっている。目を、心をとらえるのですね。彼女らの鮮やかさが、私をとらえて離さないのです。

しかし本当に素晴しい。見逃すことなく出会えたことに、安堵しつつ、喜びを感じています。

  • るなツー『女子のてにをは』(ビッグコミックス) 東京:小学館,2013年。
  • 以下続刊

引用

0 件のコメント: