2011年7月14日木曜日

ももかコミカライズド

 ももかコミカライズド』、2巻が出ましたよ。漫画家志望の女の子、ももかの迷走漫画家入門。少女漫画家志望だったのに、間違えて萌え系漫画誌に持ち込んでしまった。しかも結構うけてしまった。で、そこから迷走してしまうのですね。萌え漫画ってなんだろう。男の子にうけるにはどうしたらいいのだろう。自分なりにリサーチして、いろいろ試してみる、その前向きさ、気にいられようと一生懸命、読者が喜んでくれたら嬉しいという気持ちはいつだって真っ直ぐで、けれどその思いが自分を追い詰めるのですね。1巻ラストにて告げられた打ち切り。そう、『ももかコミカライズド』2巻は打ち切りを告げられてからのももかの奮闘を描く。まさにここからが本編といっていい展開が待っているのですね。

さあいよいよ1巻にも増して過酷なももかの苦闘が描かれるのか、そう思って読んだものだから驚きました。いえね、もっと地べたを這うような試行錯誤、七転八倒が描かれると思っていたのです。いや、確かに苦しんでるんですけど、思った以上に内省的で、打ち切りのショック、つらさ悔しさが描かれて、そうした気持ちに一区切りつけられたかと思ったら、今度は自分自身に向き合うフェーズに入って。自分はなにを描きたいのだろう、なにを表現したいのだろう。それがわからない。それを見付けだそうと、自分自身を見つめる。ああ、これって表現しようという人、皆がそうなのかな。もう何年も、自分は空っぽだなあと思ってきた私にとって、今ももかの向き合っている問題は、まさに私の問題に重なるものであって、そうか、皆がそうなのかも知れない。わからない。なにもつかめない、そんな状況で、もがいて、もがいて、苦しんで、それでなにかを掴んでいくものなのだろうか。そう思ったら、不安や怖れでさえも、それはそのままでいいんだと思えてくる。ええ、ももかというヒロインは、作り手であろうと思っている人間、それを代表しているのだ、そう思えてきたのですね。

そして、ももかひとりが苦しむ、そんな話ではないのですよ。1巻ではむしろ孤立無援であった。けれど2巻では、ヒントを与えようとしてくれる人がひとりふたりと現われて、そして五十嵐臣、彼とももかの関係も少しずつ変わってきて、ええ、臣という人。この人が、ももかとともにあろうとしてくれる。ももかは自分がなにをしようとしているか、それを明かしはしないのだけど、かわりに臣の抱えている問題。それにも触れないという約束で、ともに考え、ともに自分自身を見つめようと、ひとつひとつ思いついたことを確認していく。ええ、いい相棒だなって思ったんですね。ひとりでは気付けない、ひとりではつかめない、けれど臣となら見付けられる。違った個性、違った意識で、自分たちの気持ちの底にあるものをひろっていく。これは、今は主にももかの物語として動いているけれど、おそらくは臣にとっての物語でもあるのだろう。その双方の意識、気持ちの底が見える日はいつになるのだろう。そうした、漫画家ものでありながら、恋愛ものであり、そして人が自分自身をとらえ、乗り越えていく、そんな物語としても読める多面性が、また魅力となっているのですね。

また2巻では、臣の妹が出てきたのですが、彼女、いいキャラクターだと思います。兄大好きの妹、最近のはやりでありますが、みのり、ちょっと過剰でちょっと過激で、いいキャラクターだなあ。なんか作者には申し訳ないんですが(なんで?)、結構好きなタイプであるやも知れません。で、みのりちゃん、この子がいることで、深刻に思い詰める、そんな方向にいきすぎてしまうかも知れないなんて思ってしまう、ももかと臣のふたりの模索試行のシリアスな面、それが緩和されるようにも思うものでありますから、なおさらいい味、重要な役割を担ってるなあ、なんて思うのでありました。

あ、そうそう、懐かしいふたりにも会えて、これはちょっと嬉しかった。そして、最後の編集長のいわんとするところ。それはなんなのだろう。ももかにとってチャンスとなる、そんな展開が用意されたらよいけれど、そう思いながらも不安ぶくみ。これは、3巻を心待ちにさせる、ええいい感じに緊張感高まってきています。

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