2006年5月17日水曜日

窓ぎわのトットちゃん

 トットちゃんというのは誰かというと、日本人ならまず知らない人はいないんじゃないかというほどの知名度を誇る黒柳徹子さんであります。黒柳さんが過ごした少女時代をつづったのが『窓ぎわのトットちゃん』。最初の小学校で、授業中、窓ぎわにたってちんどん屋さん呼んでみたり鳥に話しかけたり、そうしたエピソードがタイトルになっています。

この本、ものすごいベストセラーになったのでした。1981年の刊行だから、私が八歳の頃かな。母が、私たち姉弟の寝る前に読み聞かせてくれたのをはっきりと覚えています。オレンジの傘の電気スタンド、その灯に集まって、トットちゃんのわくわくするような少女時代を追って、すごく楽しかったのです。最初の学校をやめさせられて、次に行った学校。古い電車が校舎になっていて、時間割もなくて、そうした自由な時間の中で自分でやることを選んでいく。すごく楽しそうだ、まるで夢の国のできごとみたいだ。その頃は私もまだ学校を嫌いではなかったのですが、でもどんな子供でも憧れてしまうような夢の学校の姿があったのでした。

しかし、この本を見てみる限り、黒柳さんはとんでもないお子さんだったようで、私もかなりのやりにくい子だったろうと思いますが、その比ではない。私、立ち歩きとかしなかったものなあ。でも、こうした自分の世界がとっくにできあがっているような子が、その世界をさらに広げられるような場所に出会って、その出会いや巡り合わせというのが素晴らしいよねって思うんです。学校に通う毎日が、冒険や発見にあふれた特別な日だったのだろうと、そういう雰囲気がひしひしとします。私は今の自分のていたらくを通ってきた学校のせいにはしませんが、それでももしトットちゃんの学校、トモエ学園に通えるものなら通ってみたかった。そんな憧れは今なおあります。

しかし、私がこの本で覚えているエピソードというのがトイレ絡みばっかりというのはどうしたもんでしょう。トイレに財布を落としたから長いひしゃくで汲み取りからすくっていったとか、あるいは新聞紙がかけてあった汲み取り口に飛び込んでしまった話なんてのもありましたよね。なんか、すごいリアリティをもって思い出されるのはなんなんでしょう。やっぱり子供はそういう話が好きなんでしょうか。

友達がいっぱいいらっしゃったとか、プールが楽しそうだったとか、そういうのも思い出されますね。そうですよ。やっぱり学校が楽しかったのでしょう。自由で奔放で、けれど守るべき約束があって、その中で子供は育ったんだなあ。この本を通して、私はトットちゃんとまるで同級生みたいな気持ちになって、だから昔も今も黒柳さんのことが好きなのです。

今日、テレビでね、黒柳さんのこうした話が放送されていたんです。むかし学校のあった場所に行って、むかし、関係のあった人たちに話を伺って、写真なんかも見て、私はそれをまるで自分の昔を振り返るみたいにして懐かしんで、ほら、やっぱり好きだったんですよ。黒柳さんを通して、私の心もトモエ学園にあったのだと、そんな風に思います。

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