幽霊、お化けの出てくるコメディっていうのは割と見掛けますけど、それでもここまで怖い幽霊っていうのはちょっと珍しいんじゃないかな、しかも四コマでここまでおどろおどろしい、マジホラー、マジ死体、みたいなグロテスクさはなかなかないよなあ。それこそ子供に見せたら泣くんじゃないか? そんな勢いで怖ろしい幽霊揃いだというのに、なんだかすごくほのぼのだったり、変にハートウォーミングだったりするんですね。肝を冷やす、けど心は暖か、なんだろうこのアンバランス。でも、そのアンバランスのままで、不思議とバランスは保たれている。そういうところも面白い、まさしく魅力だなあって思うのですね。
基本はシンプルです。主人公の佐倉果歩、お化け幽霊の類が怖くて苦手で嫌で嫌でしかたないのに、なぜか幽霊たちは佐倉のことが大好きで、つきまとうはラブコールするは、写真には一緒に写りたがるは、時には手助けまでしてくれる。ああ、見た目にはアレなやつらだけど、ほんとは心底いいやつ! 時には親切、時には純情。見た目に怖ろしく、けれどほのぼのっていうのは、こうしたところに発しているわけですね。
佐倉さんには友達がいまして、それがアキちゃん。この人も幽霊が見えるんだけど、やたらめったら強気で、ものともしない。負けない、怖れない、足蹴にし、むしろ逆に苦手にされている。そんな彼女が、佐倉のことを怖がらせようと幽霊のいるスポットに呼び出したりね、酷いことするんだけど、本当に困った時には助けてくれる。いい関係築けてるのかな? わからんのだけど、でも佐倉にはアキちゃんが必要なんだと思う。こういう支えてくれる、助けてくれる友達がいるから、まあ怖い目にあわされたりもするんだけどさ、佐倉が幽霊に好かれて好かれてつきまとわれても、この子がなんとかしてくれるだろう。安心感もあるのだろうなって思います。
そんな感じに、安心安全なホラーコメディ、それが『どろんきゅー』、なんですけれど……、常に親切、純情なやつらばかりじゃなくて、中にはやっぱり心底アレなのもいるんですよね。私は以前から、人にいいのと悪いのがいるように、幽霊にだっていいのと悪いのがいるのだろう。だったら、そのいいのと会ってみたいものだ、みたいなこと思っていたんです。佐倉のまわりにいるのは、そのいいやつらなんでしょうね。ですが、その心底悪い幽霊ですよ、そいつが佐倉を怖がらせたせいで佐倉が幽霊お化け全般を嫌いになったんだとしたら、それは本当に罪深いことだな、なんて思ったんですね。べたべたと仲良くまでなる必要はない、けれどあそこまで怖がる必要もない。なのに、距離のとり方を考えるどうこういう以前の状態になってしまってるのは、最初に関係を壊した幽霊サイドの問題だよなあ。ええ、やっぱり幽霊は怖いものなんだ。だから十把一絡げに怖がられて、けれどそれはやっぱり悲しい関係だなあ、そんな複雑な感想なんてのも抱いたのでした。
さて、初期の頃の『どろんきゅー』、新鮮ですよね。ええ、変更なしに載せたのは正解だったと思いますよ。最初の頃の佐倉さん、アキちゃんじゃなくて、遠藤って呼び捨てにしてるんですよね。もっとしっかりしてて、それがどんどん弱々しくなっていく。随分変ったなあ。けど、どちらの佐倉さんも素敵だと思います。それと久子さん。コンセプトに合わないから、退場せざるを得なかったんだろうなあ。だから、彼女の代わりにストーカー幽霊が登場することになったのでしょうか? 優しげな久子さん、素敵だった。好きだったから登場しなくなったのは残念。けどストーカー幽霊も健気で好きなんですよね。残念なのは、せっかくの美少女幽霊なのに、なかなか美少女に描かれないところですよ。ええ、たまにはずっと美少女のままでいて欲しいなんて思ってるんですね。それこそストーカー幽霊が可愛いだけの回とかがあってもいいなあ、みたいに思ってるんですよね。カラー掲載の時にでも検討くださると嬉しいです!
- 吉村佳『どろんきゅー』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2013年。
- 以下続刊
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