『虹色占い師』の単行本化は、まさか有り得ないと思っていたものだから、こうしてまとめて読めるようになったこと、無上の喜びであります。ずいぶん前、奥付を見れば2004年から2005年にかけて『まんがタイムジャンボ』に掲載されていた漫画で、タイトルにあるように占い師のお嬢さんが主人公。占いの店QUESTに勤めているのだけれど、本業の占いではふるわず、もっぱら事務やら雑用やらやっている、そうした様に一種のドジっこ的な味わいもある、そんな漫画でありました。しかし、この漫画、後書きにもあるように、当時アンケートの結果がふるわず、打ち切りの憂き目を見たのだそうで、ええ、だからこそきっと単行本化はあるまいと私も思っていたのでした。しかし、とにかく辻灯子という作家は、復活連載があったり、奇跡的単行本化があったり、驚かされることがしばしばです。
さて、『虹色占い師』。連載されていたころの評判思い返せば、わかりにくいとの声がとにかく多かったように思います。ええ、それをさして考え落ちだなんていっている人もあって、実際ぱっと見てわからず、読み返してわからず、しばらくしてから、あ、そうか、なるほど! と理解される。ちょっと誇張してますけど。けれどわからないことも珍しくはなく、とにかく難解といわれていた。アンケートがふるわなかった理由は、その読み解きにくさにあったのだろうと思っています。
そうした記憶があったものですから、単行本での読み直し、ものすごく楽しみにしていたんですね。どんだけわかりにくいだろう、単行本で読めばどれだけ理解できるだろう。結論からいうと、わかりにくいと思うこと、まずありませんでした。あれー、普通に読み進めていけるじゃん、あの考え落ちとかいわれていたの、なんだったのだろう。そう思ったら、後書きに読み直したら自分でもイミわかんない所が多くて直せる所は直しました
との記載がありました。ああ、やっぱり記憶は正しかったのか。
しかし、こうして修正はいったおかげか、すらすら読み進めて楽しむことができるようになって、面白かったですよ。個性的な占い師たち。ヒロインの水月はどうにも運が向いてないというか、押しが弱い? 対してものすごく押しの強い火那さん、ものすごくマイペースな風耶子さん、あまりに対照的で、その自由すぎるふたりのやらかすことが面白くて仕方ありませんでした。水月が、なんだかうまくいかないなあと思ってるところに、火那さんが追い討ちをかけるといった感じでしょうか。で、そうした影で好きなことやってるのが風耶子さん? とにかく癖のある人たち、時には厳しく当たることもある、決して仲良しさんばかりではないといった感触があって、けれど新人で立場の弱い水月も芯が強いといいますか、負けっぱなしでない。いいバランスですよね。それに、ひとり繊細で親切な乾さん、とにかく皆個性的でキャラクターが立っていて、そうした人たちが引き合って、関わり合って、面白みも出てくる。辻灯子的といってもいいと思うのですが、ちょっと気のきいたやりとりににやりとさせられる、小気味のよさが魅力的です。
そして、今ちょっと私が期待してるのは、もしかしてこの単行本がですよ、売れたりなんかしちゃったら、復活連載なんかもあったりする? いや、資料の大半が整理されちゃったらしいので、それはないかなって気もして、けれど少しでも続きが読めれば嬉しいな、などと思っています。そして願わくば、単行本に収録されなかったページを含めて第2巻を出して欲しい。欲張りですね。けれど、わずかでもそうした可能性に期待したくなる、そうした作家であるのです。
- 辻灯子『虹色占い師』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。
引用
- 辻灯子『虹色占い師』(東京:芳文社,2010年),113頁。
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