『小森さんは断れない!』、これは大当たりだと思う。周囲の皆から頼りにされている小森しゅり。いい人オーラが出ているらしく、思わず頼みごとをしたくなる。クラスの皆も先生も、道を歩いている時だって迷った人が続々と集まって、思わず彼女に頼みごとをしてしまう。そんな小森さん、人助けは嬉しいなんていうんですね。頼みごとを迷惑とは思わない小森さんの活躍と、ちょっと自然体でいられる瞬間、そうしたふたつの側面が描かれるのがよいんですよ。小森さんと一緒に遊んだり冗談をいいあったりできる友達、めぐみとまさ子の存在、それがすごく魅力的。彼女らと一緒にいる時は、小森さんも普通の中学2年生でいられる。そうした気の置けない関係が描かれて、実に豊かなんですね。
しかしこの三人、面白い。頼まれごとを断れない、いや断らないのかな? 小森しゅりはなんのかんのいって優秀で、勉強もそこそこできるし運動も抜群。友達ふたり、根岸まさ子はちょっと皮肉屋なんだけど、勉強はしゅり以上にできるし、なにやらせてもそつなくこなしてしまう。いや、けど運動は駄目なんだよね。そして西鳥めぐみ。この子が重要なんだと思う。しゅりに頼る頼る、勉強教えてくれ、宿題見せてくれ、だが断る。めぐみとのやり取りに、しゅりのらしさはよくよく現れて、この子らの前ではよそゆきじゃないんだ。気を張らず、思ったように振舞える。いつもの頼まれごとも、それを引き受けるの、別に無理してるわけじゃない。でもそうじゃない。これでいいのか、断わることで嫌われるのが怖いんじゃないだろうか、自分のありかたについて迷いもすれば困りもするしゅり、そんな時にヒントを与えてくれる友達がいる。ありのままの小森しゅりでいいんだって教えてくれる友達がいる。それは、スーパーでなんでもできて特別、そう思われがちなしゅりが、普通の女の子でいられる場なんだと思う。頼まれれば頑張ってしまう小森さんが、頑張らないでもいい、そんな関係がやさしくて素敵なんですね。
頑張る小森さんが素晴しい。反面、頑張らないでもいい時間が描かれて、この対照的な小森さんのありかた、それが彼女のキャラクターを豊かにしていると思うのですね。いろいろ考えてしまった時、不安を感じた時には助けてくれる友人がいて、また友人がそうだったらそれを助ける自分であろうとする。そうやって、支えたり支えられたりしながら、肩寄せあうように歩んでいく彼女らは、本当に素敵な友人で、青春の風景そのものであると感じさせられるのですね。誰かのために頑張ることも、友達と一緒に楽しい時間を過ごすことも、ちょっとしたきっかけで友人の知らない表情知ってしまうことがあれば、自分自身について気付くことだってある。そうしたひとつひとつの経験が、彼女らを少しずつ前に歩ませ、仲を深めさせていくのを見るのが好き。だんだん大人になっていく、そうした時期にある彼女らの大切な時間を描いている、それがとても心地よくって、ああ、小森さんたちの通わせる気持ちのあたたかさがあふれている。彼女らの毎日を、一緒にいる時間を大切にしている、そうしたところが本当に嬉しくさせてくれるのですね。
- クール教信者『小森さんは断れない!』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2013年。
- 以下続刊
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