『あまゆる。』、これ、実に素晴しい。女子高校生たちの日常もの、と一口にいってしまいそうになるけれど、読んでみれば、ただただ日常を描いて、それがいい、みたいなくくりにとどまらないことがわかるのではないかと思います。ええ、私なんて、ゲスト掲載時に、これはいい、これは素晴しいよ、すっかりその魅力にとらえられて、というのもアヤですよ。いや、アヤ以外もいいんですよ。天真爛漫さが可愛いハルとか、小ささが愛らしいマオとか、マオのこと好きすぎるところがたまらんユウとか、けどアヤがものすごい。小柄でツインテール、いわゆるツンデレ? いやいや、そんな言葉でくくって欲しくない。ええ、アヤ、素晴しいんです。
本人もいうんです、どうせど田舎者よ。だいたいが田舎の学校なんですけど、アヤの育ったところは、さらに輪をかけて田舎というんですね。そのせいで都会というものにやたら憧れを持ってまして、普段はクールぶってるのに、ちょっと町に出たら、都会だ、建物が密集してるってすごい大喜び。中学までは同学年が誰もいなくて、だから同い年の友達との距離をいまいち掴みあぐねていたりもして、寮で同室のハルがですね、結構ベタベタと距離の近い子なんですけど、これくらいで普通なのかしら? アヤがその距離に自然と馴染んでいっちゃってる? ええ、ちょっとずつハルのペースに慣れていってますよね。こうしたやりとりをもって、こうと強調せずとも、彼女らの仲が深まってることが感じられる。ええ、そこが実にいいんです。
一見ツンデレ、パターンどおり、鋳型どおりに作られたキャラクターです、みたいな感じに思ったら、実は全然違ってるんですよ? っていう、その違ってる感じもですね、実に彼女らひとりひとりの個性を彩って魅力的。アヤは寂しがり屋だったり、面倒見よかったり、そうしたところ割と前面に出してくれるでしょう? そうしたらハルはハルで、アヤに甘えながらも、期待に応えようと頑張ったりする。そうした彼女らのらしさひとつひとつが、割とのんびりしてる彼女らの田舎の学園生活、それを他でもない彼女ら独自のものに変えていくんですね。あの、街に服を買いにいく話なんて最高でしょう。いや、コンビニでもいいんですけど、これまで身近でなかったものに触れることが嬉しくて仕方ないアヤの気持ち、それがいきいきと伝わってくるようで、ああ、なんて可愛いんだ、もっといろいろを知って、その喜ぶさまを見せておくれ、そうした思いにかられてしまう。うん、なんだ、年寄りが孫を喜ばせようとする、そんな感情に似てるのか? わかんないんだけどさ、いろんなことに嬉しさ楽しさを感じる彼女らがですね、実にほのぼのとして、読んで見ている私の気持ちも、嬉しかったり楽しかったりする、そんな風に変えてくれるのです。
農家の子アヤの活躍する場面、それもいい。いや、アヤのことばっかりいってしまいますけど、ハルだっていいんですよ。アヤの家にいった時のハルとか、もうものすごく面白い。本当にこの子はアヤのこと好きなんだなあ。マオとユウだって素晴しい。ほんと、彼女らの関係、それが生きている。コミュニケーション、交流するそこに気持ちの動いてすごく引き付けられる、そんな魅力があるのですね。
- マウンテンプクイチ『あまゆる。』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2013年。
- 以下続刊
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