2022年7月5日火曜日

『まんがタウン』2022年8月号

 『まんがタウン』2022年8月号、発売されました。表紙は『押しかけギャルの中村さん』。はち切れんばかりのスタイルで、真夏の海辺に降臨!? ハートのかたちのサングラスも、この人がつけると浮かれてるって感じあんまりしないのはさすが。ええ、サングラスもカラフルなネイルも、手首のハイビスカスも、全部なじんで、すごくマッチしているんですね。中村の背後には、対照的にとってつけた感満載の秋山が! 君は、君は、夏の海が似合わないのかい……!? 水中眼鏡にシュノーケル、パーカー、浮き輪とフル装備なんですが、中村とはまた違う意味で浮かれてる感が出てこないな……。でもなにか焦ってる様子、率先して前にいく中村に圧倒されてる!? いやあ、このコントラスト、ふたりの関係よく表されてるなって思いました。

今月は新連載が1本です。

『恐竜とカッパのいる図書館』

いいですね、この雰囲気。やりたい人がいないからと、くじ引きで図書委員やらされることになった卸町香歩と薬師堂カオリ。ふたりあまりに雰囲気が違って、すごく好対照。放っておくとなにもかも忘れて本を読み続けてしまう香歩に、本とかまるで無縁に見えるカオリ。

さて、かくして図書委員になったふたりですが、図書館とか香歩にはうってつけなんじゃない? と思ったら、違うな、この子、想像以上だぞ!? 今自分の手にしている本以外、まるで意に介さない。委員決めもまるで聞いてない。図書室に引っ張って連れていかれても、そこで延々自分の手持ちを読み続ける。

すまん、カオリ、これは真面目な香歩と本とか興味なくて仕事なんてやる気ないカオリの話だな、とか思っちゃって、本当に申し訳ない。いやもうだって、香歩、仕事をするとかまるで考えない。本だけ! やるべきこと片付ける、そう思ってるのカオリだけ! なんだよ、カオリさん、すごく真面目じゃん!

いやもう、偏見っていけませんね。見事に予想を外してきたふたりでした。

そしてカオリの意外性。この本より面白い話を聞かせて、無理難題を吹っ掛けてきた香歩に、カオリ話して聞かせるんですよ。森に住んでるカッパの話。自適に暮らすカッパだけれど、ともだちが欲しい。そんなカッパの物語。

即興で語って聞かせた? そう思ったら、ああ、ちょっと違うのか。子供の頃、母に聞かされたお話。カオリの母、病床? 絵を描いて、お話聞かせてくれた、そんな思い出がベースにある。

このカッパの物語、カオリにとって大切なものなのかも知れません。けれど、ここから先はカオリも知らない。すごく興味津々に身を乗り出してきた香歩、その表情にカオリすっかり呑まれて、ああ、ここからはカオリが物語を紡いでいくのか。

その先は、カオリも知らない、誰も知らない。そんなまっさらな状況に踏み込み、同じくまっさらな香歩との関係を築きあげていくこととなる。すべてはまだまっさらな物語、これから語られていくだろうこと、その変転もまた楽しみと思わせてくれる、そんな引き込む第1回でした。

『猫またはごはんを。』

フク、獣医先生のところに出頭ですか!? ネコマタであることがバレたから!? いや、そうだといえばそのとおりなんですが、目的はフク自身の秘密ではないのか。むしろ、ネコマタにも必要かわからないけれど、診察してくれる。健康チェックをしてくれる。いやあ、いい先生じゃありませんか。実際、ノミもついていたわけだし、ツメ切りもしてくれたし、そしてついに先生の目的が判明。猫たちとコミュニケーションできるフクに、問診を手伝ってほしいというんですね。

いやあ、いい先生じゃありませんか。けどフクは見事に誤解して、妖怪じみた顔してサチについての誤情報をつかませようとする。

ああ、フク。見た目に愛らしいネコマタだけれど、その実はやはり年を重ねて知恵をつけた妖しい存在なのだということ、ちょっと実感させられた一コマでした。

そしてこの漫画のキモである、ごはん要素も出ましたよ。今回は獣医先生がつくった豪華お弁当! ああ、お手軽メニューと、そこまで手はかからないもののちょっと気の利いた一品と、ジャンルの幅が広がったように感じます。でもって学ぶ気満々のフク。ここでの会話もちょっと噛み合ってないの、なかなかに関係が進展せずやきもきさせられる予感をさせますね。

『あの世で猫になる』

朝倉の住むアパート。事故物件と名高いのだけど、怖いところといわれてるのは、主に大家のせいですか!? 霊にも強い、侵入者にも強い!? 頼りになると思っていいのかな!? いや、なんかちょっと違う気もするんですが、危険を寄せつけないのなら、それはそれでありなのかも……?

なんか、化け物には化け物をぶつけんだよ的な存在ですよね、ここの大家って。

さて、今回は自分の来歴を気にするタマがメインです。ネズミに助けてもらい、生前の自分について調べようとするんですが、どうにも情報が出てこない。このアパートに憑いてるんだからと、事故物件情報をネットで調べるも、出るわ出るわ怪しい情報。いやもうほんと、なんなのこの物件! と思ったら、攪乱目的で大家自身が撒いとるのか。

うん、この大家らしい。

大家も知らないタマの来歴。推測こそはできるけれど、あくまでも憶測に過ぎない。一応は調べてくれるというけれど……。これ、なにか今後の展開に関わってきそうな予感。タマにとって、ひいては朝倉にとっても、転機となるべき情報が出てきそうな予感がしますよね。

『新婚のいろはさん』

高原のホテルに泊まっているいろは。はじめはというと、旅先だというのに突発の仕事で大忙し。バスの時間までにはかたづけるというので、ひとりラウンジでくつろぐことになったというのですね。

そこで出会ったお婆さん。この作者らしいといったらいいのか、一筋縄ではいかない、そんな雰囲気ある女性。この高原には主人とよくきていた。そういって夫との思い出を語るのだけれど、いやもうすっかりしてやられたましたよ。なんだあ、ご主人、存命じゃん! この人のいっていたひとりというの、夫が仕事で部屋にいるからってだけだったのか。すなわち、いろはと同じ状況だった。うん、一筋縄ではいかない、まさしくそんな人でありましたよ。

でも、この人の語ったこと。人生の終わり、老境に差し掛かって思うこと。対しいろははまだ途中、むしろこれからといっていい、まさしく始まりに立っているという若さ感じさせる発言をしてみせて、ここに現れたコントラスト。どちらがいいというのではなく、同じ場所で同じものを見ていても、感じるものが違ってくる。そんな意識の違い、世界の捉え方、感じ方の違いがはっと明確にされたところ、素晴しかったなって思います。

しかしこの老夫婦、最初、未来のいろはさんがやってきたのか!? とか思いましてね、いや、タイムスリップはしてきてはいないでしょうけど、でもいろは、はじめの夫婦とこちらのおふたり、明らかに重ねあわされること想定していますよね。

だから、若かりし日のいろは、はじめと、老境のいろは、はじめ。人生の異なるステージにあるふたりがそれぞれに引きあい出会った、そんな読み方をしてみるのもまた楽しい。そして、老境のふたりにも残されていたはじめての経験、まだまだ人生は途中だということが描かれるの、嬉しかったなあって。老いがただ可能性を奪うわけではない、そういおうとするかのようでした。素敵です。

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