2015年2月4日水曜日

ハナイロ

 うおお、やっぱり、この漫画すごくいいな。『ハナイロ』。修行のために、魔法の世界から人間界にやってきた見習い魔女三人の物語。花言葉をもって魔法にかえるこの子らの日常は、なんだかいろいろキラキラしていて、はなやかだったりキュートだったりと、実に魅力的であるんですね。そしてそれは魔女の子、茉乃花、沙里、うるみ、この子らのキャラクター、いきいきとして、溌剌として、まるで輝いているようなその様子に発していると感じられて、ええ、ほんと、どの子もすごくチャーミングなんですよ。魔女の子の、人間界で出会うこと、もの、人、その時々の感情の発露、それが鮮かで、ああ、ほんと、ひきつけられるんです。

キャラクターが魅力的、そういいました。ほのぼの、のんびり、イノセンスさが光る茉乃花。そんな茉乃花が大好きで、クールな見た目とうらはらに、ちょっとヤバめの愛情をそそぐ沙里。ほっとくとふわふわしたり暴走したりするふたりをまとめる、しっかりもののうるみ。などなど、結構類型的とも感じられるキャラクターづけされてるメインの三人なんですが、読んでみたら、あれれ、あんまり典型的って感じじゃないぞ? それぞれの子らの個性は、自由さもって展開されて、ああこれは描き方がよいのだろうな。この子はこういう子という決めつけをもとに動くのではなくて、その時々のシチュエーションに応じて、自然にその子のらしさをふくらませながら息衝く。そうした触感が実に心地良く、ああ可愛いな、素敵だと、思わずひきこまれてしまう。いきいきとしているという所以は、こういうところにあるのでしょうね。

描かれるシチュエーションは、学校でのこと、三人が働く花屋さんでのこと、そして日常の情景などなど、大きな物語というよりも小さなエピソードの積み重ねが主であるのですが、そうしたエピソードに、彼女らの魔法、それがささやかにアクセントを添えて、人の心の暖かみが描かれれば、また彼女らの一緒にいて楽しいといった感情が広がって、軽やかにしかししっとりと確かな感触を手に残してくれるのです。絵の力もあると思う。絵の魅力に支えられて、表現がすっと読み手のふところに入り込んでくる。もちろんキャラクターもあるでしょう。魅力的なキャラクターが、のびのびと生きて、動いて、自分のよく知る子らの暮らしを身近に感じるがようなところがある。そして語られるエピソードの、素直でやさしげで、暖かみもってふくらむその豊かさ!

様々な要素が、互いに互いを支えあい、魅力を引き出しながら、非常に高いレベルでまとまっているのですね。決して破綻しない。と同時に硬直もしていない。その安定感とのびやかさが素晴しい。魔女の子らが知り合っていく人間の子供も、クラスメイトも、街の人さえも、それぞれの個性を持って現れては、彼女ら皆の暮らす世界を彩って、新たな広がりを生み出す芽吹きと感じさせます。そしてその広がりが、彼女らのささやかなエピソードを包み込んで、よりいっそう魅力的に花やがせるのですね。

  • アカコッコ『ハナイロ』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2015年。
  • 以下続刊

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