2019年9月24日火曜日

『まんがタイムきららフォワード』2019年11月号

 『まんがタイムきららフォワード』2019年11月号、発売されました。表紙は『スローループ』。制服姿のひよりと小春が、一緒にジャンプ? 釣竿持ってるひよりと、エプロンしておたまを持ってる小春、ふたりそれぞれの得意ジャンルが見事に絵に示されて、これ、なんだろう、可愛いイラストだなあ。ちょっと照れたみたいにしてすましてるひよりと満面の笑みの小春、こうした対比もいいですね。でも、ふたり、対照的ってわけじゃなく、これでちゃんと調和してる。その感触、ちょっと独特で特別。その関係さえも伝えるようないいイラストです。

今月は新規ゲストが3本です。

『花とキノコ』。女性同士の恋愛もの? 高校生の頃、住む世界が違うと一線を引いて、憧れながらも距離を置いていた女性、紫乃と再会したゆり子。自分のベッドに眠る彼女を側に感じながら、思い出すのはあの日のこと。紫乃と一緒にやった草むしり。キノコというあだ名をつけられ、いつになく近しく感じられた彼女が、その日を限りにまた遠くに感じるようになった。日向に咲く花と日陰のキノコ。自身を日陰者として関わりを避けたこと、未だに悔いになっているゆり子の、おそらくはここからはじまる紫乃とのストーリー。電話番号を残していった紫乃に連絡し、彼女のもとへ向かおうと扉を開いた先が光にあふれているの、ゆり子の越境。紫乃の世界に踏み出していく背が頼もしいです。

『カレをカノジョに。』。クラスの男子、真面目な彼が女性用下着売り場にて思案顔。どうして!? と思う気持ちはわかるけど、ほら、あれだ、母の日、はないな、彼女へのプレゼントかも知れないじゃん。なるほど、柔道部の先輩を送る会にて女装するよう申し付けられたのか。どうせやるなら、笑われるのではなく、完璧に化けてやる。意気やよしだな。出会ってしまったが運のつきか、主人公坂谷は長塚の女装につきあうことになって、そうしたらこれまで知らなかった長塚の普段見せない側面が見えてしまった。あの、ひらひらに憧れてるっぽい発言とかいいよね。目を閉じて化粧を待つ長塚にちょっとときめいてる坂谷も悪くない。いわゆるひとつのボーイ・ミーツ・ガール、逆かな? ガール・ミーツ・ボーイものでありますね。坂谷の独占欲と、それに応えた長塚の気持ちなど、見どころ細やかにちりばめれていたと思います。

『さくらプロージョン』。四コマ漫画です。JK発明家さくらと助手のもみじが、なんだか危ない発明でやらかす話。1話は爆発ネタか。爆発までの残りコマがカウントダウンされるの、なんかニヤニヤさせられるな。しかも爆発を数度繰り返す、大落ちにも持ってくる、そうした構成、悪くなかったです。今回は2話掲載、2話目は姿を消す発明品、これの落ちへの絡め方など、行き当たりばったりっぽく見せながらも、ちゃんと冒頭からラストまでの流れ、作られてるんですね。つっこみ役でいいのかな、もみじがいいですね。わりとポンコツ、わりと辛辣。常識人寄りだけど決して常識人ではない。百発百中手裏剣での友人への批評とか、素直なのかなんなのか。でも、いい味出していました。キャラクターが可愛いのもいいと思います。

『スローループ』。いいですね。ふたつのストーリーの流れがうまく縒り合わされている。再婚した両親の結婚式と、管理釣り場でのフィッシング情景。冒頭に語られた式の話題が、いったん忘れられたかと思ったら、釣りの合間にふたたび顔を出して、広がっていく。独立していたふたつのトピックがここで繋がって、両親の結婚式を自分たちで開こう、今日の魚をそのために使おう。釣りのモチベーションも俄然高まって、あの小春の頑張りですよ。余裕持って構成されたコマの流れは、小春の動きも気持ちもあまさず伝えてくれて、伸び伸びとした動き、気持ち、高揚感、素晴しかった。この釣りシーンにひとつ目の山ができたと思ったら、続いて家族とのひととき、それが静かな盛り上がりを作っていく。調理の場面も家族の語らいもすごくいい。釣りが動的なクライマックスを見せてくれたとしたら、後半は静かに深まり広がっていく情感の世界。この漫画の持つ多面的な魅力、それが一話にしっかり盛り込まれて、実に豊かと感じさせる良エピソードでした。

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