2018年6月25日月曜日

『まんがタイムスペシャル』2018年8月号

『まんがタイムスペシャル』2018年8月号、先日の続きです。

『穂積くんは猫に勝てない』。今日はお祝いというのだけど、なんのお祝いなのだろう。買い出しにつきそう穂積の疑問に返ってきた答が、猫たちの誕生日。猫でも食べられる専用ケーキが準備されてたり、そして人用に用意されていたのよりずっと豪勢な猫のご馳走。あの穂積の困惑、めちゃくちゃ面白くて、キャビアとか猫に大丈夫なん? 高級牛のそぼろにキャビアのせマグロ、鹿肉のローストというの、こういうのも猫用に調理されたのが売ってたりするのかなあ。きっとするんだろうな。猫が苦手だった穂積くんもずいぶん慣れてきたようですね。猫たちを眺めて、その成長に感心したりするまでになってます。これ、きっとだんだんに猫好きの住人としてのレベル高めていくことになるんだろうなあ。そう思わされた回でした。人同士の食事をともにしながらの団欒もよかったです。それがよかっただけにね、翌日のあの情景。ご馳走食べたせいでいつものフードを拒否するブブとの対決、これがおかしくておかしくて。毎年の恒例だっていうんですが、人は人で学ばずにまた来年も猫に贅沢させてしまうのか。させてしまうんでしょうね。愛とは複雑です。

『ふたりが家族になるまでに』。今号から連載スタート。さらに内容的にも、これまでの関係から新しい関係に踏み出す、そんな展開が描かれて、ああ、これまではある意味序章というべきものであり、いよいよこれからふたりの物語がはじまるのだ、そうしたことを実感させられる回でありました。ジローの引っ越し。同居がうまくいかなかった時のためにと、引き払わず残してきたアパート。まだ荷物を残していたその部屋から、ふたりの住む家へと引っ越していきます。あさひもその手伝いに駆り出されてるのですが、一歩踏み込んだらきっちりきれいに梱包されたダンボールの整然と積み上げられた部屋ですよ。これ、なにを手伝えっていうんだ? あさひがそんな気持ちになったのもちょっとわかる。でも、ジロー、実はあんまり余裕なく急いで片付けていたのかも知れませんね。梱包こそはあらかた終わってるけど、詰められている中身が箱に記載されてないとか、そういう不備がままあって、けど、やっぱり手際いいですよね。荷物の運搬、その過程で、ついつい意識してしまったジローの腕のたくましさとかね、体力あるところとかね、ああ、どこか男っぽさ感じさせなかったジローの意外な一面出ちゃいましたね。そしてふたりの、ちゃんと家族となれるかなって語りあう場面、名前を呼び捨てにされて思いもしなかった気持ちのわきあがるところなど、ええ、あきらかな変化の兆し、見えた瞬間でありましたね。

『なごみ先生は職場のお医者さん』。VDT作業環境を見直します。ああ、これ自分も他人事ではないわ。モニター増やしてもいいっていわれてるんですが、自分はかたくなに固辞して、支給のノートPC一本で作業してるんですよね。ノートPCは、どうしても画面の高さが低くなるから、覗き込むような姿勢になって、VDT的には非常によろしくない。ええ、今回なごみ先生の提案したように、正しい姿勢で作業できる環境を考えるべきなんですよね。しかしこの職場、いいですよ。環境見直しのために社長におねだりしたら、仕方がないって予算出してくれました。これ、色仕掛け!? 甘えてるの!? と思いきや、怒ったら結構怖いとのこと。そうか、冗談っぽく頼んでみせただけで、赴任当初妥協を見せなかったように、ビシバシやりあってきた過去とかあるのかも知れませんね。環境改善、PCの周辺機器の購入という話を聞いて目の色変える社員さんたちが面白かったです。メモリ増設、サーバー強化といろいろ意見が出てますが、そのへんはVDT環境というよりも、開発環境の充実といった感じですね。改善の方向性も、エルゴノミクスキーボードを導入するとか、キーパッド試したいとかいう意見があると思えば、机まわりの整理をするために棚を増やすとかね、そういうアナログ的な、いやキーボードもアナログな部分だと思うんだけど、解決がはかられるところとか面白く、またためになったように思いましたよ。環境改善の結果がちゃんと出てるところもよくって、けど居心地よすぎる職場の意外な落とし穴。この落ちも気がきいてよかったです。

『あの日の海と16歳の夏休み』。最終回でした。そうかあ、終わってしまったのか。ショックだったのですが、いや、けれどこの漫画はそんなに長くは続かないのではないか、そうした予感は持っていて、というのも、16歳の夏休みなのでしょう? 劇中の時間、一ヶ月と少ししかないんですよ。それに気づいたの、数ヶ月前だったんですけど、そうか、自分は来年のさきを見ることはできないんだろうな。そう思っていたら、今回で終わり。本当に来年のさきを見ることはかなわなかったのです。

花火大会の日。アイルちゃん効果で満員御礼、大忙しとなった美容室です。着付けが間に合わないというピンチの風花も引き受けるというアザミさんの心意気。それに感心していたわけですが、いやあ、この風花来店がさきの心をあんなにも揺さぶるきっかけとなろうとは。まったくの予想外で、そしてまさしくこれがさきの今年の夏休みの、いや、彼女の青春の山場となろう瞬間だったというのですね。

いい最終回だったと思います。これまで出てきた人たち、個性的でチャーミングな人たち、さすがに全員ではないんだけど、顔を見せてくれたのは嬉しかったし、またその人たちがさきのこの日経験するできごとにそれぞれ関わっているのもよかった。こうしたところに、よく準備された最終回だったことがうかがえて、さきと風花の関係もそうなら、柿崎のこともそう。ああ、そうか、この漫画、どこか懐古するような感触あったのは、青春の苦さ、それを感じさせるニュアンスがあったからかも知れません。そしてその苦さは最終回、風花が一番綺麗になった瞬間にさっと広がって鮮烈でした。あれ? もしや? そう思わせてなお引き伸ばされる苦味の正体。それが明かされるまでの時間差に、さきの心に波立つ感情のうねりはたわめられ、大きく打ち寄せるような印象を与えることとなったのかと思います。

さきの感情の大波を浴びてしまって、私には、さきの風花のためにとった行動の、本当のところがわからなくなってしまったのでした。下駄を忘れた風花に、躊躇なく自分のを貸したさき。友達思いなのか、モノローグにあるように足が痛かったからなのか、いや、あるいは、もしかしたらと期待していた淡い願望、その期待の決してかなうことがないことに、さきが思い至ってしまったからこその行動だったのではないか。自身の恋の破れたことを知ったさきの、高ぶる感情をおさえつけようとしたゆえの行為なのかも知れない。あまりに大きかったショックに放心したのかも知れない。自分の夢見た可能性をいっそ捨てようとした。いや、あえて風花に譲ったのかも知れない。そして、そのどれもがあの一瞬、さきの胸裡にいりまじったのかも知れない。そうしたことを思っては、店長とともに花火を見るさきの姿に、しばし感慨を覚えたのです。

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