2024年3月23日土曜日

『まんがタイムきららフォワード』2024年5月号

 『まんがタイムきららフォワード』2024年5月号、発売されました。表紙は『球詠』。瑞帆が打って小町が投げる! そしてそこにシーズン200奪三振の文字。というのも、今号で通算200号なのだそうですよ。1年で12冊しか出ない月刊誌、なので18年かけて達した冊数。綿々と繋がれてきた連載陣とゲスト作、読み切り、多くの漫画たちのバトンがリレーされた結果がこの数字で、そして今の誌面なのでありましょうね。そう考えれば重い数字であります。そしてその記念号ともなる表紙に新越谷の一年生ふたりの活躍が描かれているの、引き継いできたもの、引き継がれていくものといった意味を見出したくなりました。

今月は新規ゲストが2本です。

『恋人ごっこ』

なかなかにいい感じなのではないでしょうか! 恋人はおろか友達もいない春日部ナズナが、隠れ家にしている準備室の窓から見かけた下級生、青葉が残した制服のリボン。それを木の枝から解いたことからはじまるラブストーリー。学校に伝わる恋が成就するおまじないが、これと接点のなかったふたりを強く結びつけて、恋に落ちるとはこういうことか。仕掛けた青葉が自己暗示にかかるのはわかる。しかしこの仕掛けを知らなかったナズナも青葉にときめきを感じて、ああいよいよここから恋がはじまっていこうというのですね。

下級生からの圧に負けるナズナがちょっとかわいい。積極的にグイグイいく青葉の攻め力には魅了されそうになる、そんなチャームが溢れているし、負け負けのナズナにも受けのポテンシャルを感じさせられて、さあどうなる、次回はさらなる猛追があるのかと思うと、ぼやぼやしていられない! みたいな気持ちになっておりますよ。

『まごころを貴女に』

シンプルでコンパクト、それゆえに素直に伝わってくるよさがあったと思います。

進学した高校の寮で同室になった女の子、羽白紗月。親との折り合いが悪く、それが気持ちを乱すために競技に打ち込めないでいるスポーツ推薦生との交流のはじまりを描いた掌編です。結果を残さないとと焦るその子に、食生活が乱れていてはいけないよとお弁当を作る主人公、日野原絵梨。そのお弁当が親との関係に悩む紗月から、心の鬱屈をとりのぞくというのです。

誰かが誰かを思い作ってくれる食事のあたたかさ。それはただ食事が、というだけでなく、こめられた気持ちもまたあたたかい。そうしたシンプルな物語に、絵梨と紗月の個性が乗って、ふくらみのあるお話にしあがっていました。

この先のお話が語られることがあるとしたら、絵梨の作るお弁当や、押しの強い絵梨にたじたじになって、ついにはなつくことになりそうな紗月、その心の動きなどが面白そう。などと思わせたのは、ふくらみのあったがゆえだと思いました。

『魔法使いロゼの佐渡ライフ』

なんと今回はロゼがタコ漁にチャレンジです。というか、伊藤さんに連れられて見学といった感じだったのですが、いらん魚でとれるタコ。ぽいっとタコカゴを放り込んだと思ったらあっという間に時間は過ぎて、ビニール袋に入ったタコを持ち帰ってくるというんですよ。

このスピード展開! からの、速攻で決まるたこ焼きパーティ。たこ焼きの想像がつかないロゼが初遭遇するたこ焼きは、中身が熱々でうかつに食べると火傷しちゃう! こうしたたこ焼きあるあるから安定のロゼの食レポ。こうしたちょっといつもと違った日常の描かれる今回。なんだか楽しくて、ほのぼのと心地良く読めました。

と、そこに平穏を破る連絡ですか!? 市野原ときこからの呼び出しを受ける紗菜。さあどうなる、なにか悪いことでもあるのですか!? と、ついついネガティブなこと考えてしまうのが私です。

『球詠』

先輩たちと一年生の交流の薄さ。積極性の違いや接点のあるなしによって、その関係性に濃淡が出てしまうのもしかたがない。とはいえ、この状況を放置しておくのもよろしくない。この合宿を通じて親睦を深めていこう。ということで芳乃が策をこうじてくれました。

しかしその交流案、レクリエーションはよいとして、その種目がびっくりですよ。まずは麻雀。ルール知らない子がいるんだけど!? からの卓球、肝試しと続いて、ほんとバリエーション豊富だな。と思ったら、しっかり肝試しに仕込みがあって、先生が不審な黒髪の女を演じている! とそこからガチ怪談に展開していくところ、しかもそれ先生ひとりが経験してるっていうの面白くて、先生には気の毒なんですけどね!

卓球は皆それなりに心得があるのかなと思ったら希がまるで初心者。下級生からのアドバイスを素直に聞き入れともにがんばる希の姿を見て、いろいろ思い込みや鬱屈していた気持ちを捨て去ることのできた美咲などなど、この交流会が果たした役割、大きかったなあ。とりわけその真価は、ラストの体づくりに打ち込む美咲の様子に見てとれて、この和気あいあいとして、上級生も下級生も一緒になって取り組んでいく雰囲気ができあがろうとしているところ、ああ今年の新越谷もよさそうだ。なんてこと思わされたのでした。

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