2022年11月25日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2023年1月号

 『まんがタイムきららフォワード』2023年1月号、昨日の続きです。

『スローループ』

男の子たちの会話を聞いて、いつか自分も二葉と離れることになるのではないか。違う中学に進学してしまうのではないかと心配している藍子。この、二葉への愛情が屈折しながらも非常に過剰なこの子の心の動き。二葉との別れを思い、不安に心を曇らせていくその様がつぶさに描かれてきた序盤からの流れ。思いの過剰な子とはいえ、そうでなくとも大切な友達との別れはつらい。心配に揺れる思いへの共感をいざなう、そんな描写はさすがの一言でありました。

しかし、だからこそですよね、一世一代の決意をともに、父に、母に、中学受験はしたくない、二葉と一緒の学校にいきたいと願い出る藍子の思いの丈が語られる終盤。ああ、藍子、頑張ってる! なんとかして、父を、母を説得しようと必死なんだなあ。

なんて思ったところで、いや、なにその、父上も母上もえらいこと理解ありなさるなあ! というか、藍子の勉強に関しては見放していらっしゃる!?

予想外の展開でした。あまりの見事な肩透かしに、もんどりうって転がり落ちる思いでしたよ。

『球詠』

美園学院戦が終わってからの新越谷野球部の様子が描かれましたよ。

秋大会の決勝。梁幽館を破り美学が優勝を勝ち取ったというのですね。その試合の様子は簡潔にまとめられながらも、戦いの熾烈であったことを雄弁に伝えて、こうした見せ方もやっぱりうまいですよね。新越谷野球部の物語にとっては挿話ともいえるようなささやかさでありながらも、その存在感は確かなもので、これこそはヨミたちも意識しないではおられない強豪のそれなのでありましょうね。

さて、美園学院梁幽館戦の勝負を分けたポイントについて語りながら、自分たちの試合を振り返っていくくだり。いくつもあった判断ミスを洗い出していき、そしてそれを次の成長のための課題としていく。こうしたところは、負けてなお得るところのある、スポーツものの醍醐味といった感触ありました。

後半にはドラフトの様子なども描かれて、そうか、高校生の彼女たちが卒業とともにプロへの道を歩むことになるわけか。普通に高校野球見てドラフト見て、というのを楽しみにしている人たちにとっては当たり前だけど、自分にとってはなにか不思議な感じがして、それは菫が感じた違和感? 自分との隔りのような感覚に似たものだったのかも知れませんね。

次は菫の物語がはじまっていくのでしょうか。野球から離れたところにある自分の可能性。野球以外の自分の世界に目を向けつつある彼女の思いの根本はいかなるものであるのか。

ドラフト会議を見ていた時に菫の感じていたもの、それがあるのは間違いない。はたしてこの思いが大きく育って、彼女の心境にさらなる変化を加えていくことになるのか。あるいは、この違和感を乗り越える、そんなできごとなどあるのでしょうか。

これまで描かれてきたものとはまた違ったものが繰り広げられそうに思います。

『花唄メモワール』

大正時代の花瀧屋にタイムスリップしてしまった梅。現代に帰るべくかつての花瀧屋に身を置いた彼女の奮闘記が続いていくのだろう、なんて思っていたら、あれ!? なんと、いきっぱなしの話ではなく、いったりきたりの物語なんですか!

いやはや予想とは違ったよ、ちょっとびっくりしましたよ。

今回は、フランスから日本にやってきた少女、アイリスの求めに応じて梅がコートレットならぬトンカツでもてなすというエピソード。思えば、梅は初回から料理に精を出して、トンカツなどもお手のものでありました。なるほど、ここにこうして繋がってくるわけですね。

と思ったところで、つまるところ、これ、梅がアイリスのためにトンカツを作れるようにと曾祖母が事前に仕込んでいた!? 大正時代の花瀧屋に自分の曾孫がくることを知っている曾祖母が、その時に知った梅をいう名を曾孫につけさせ、さらにこの時代の旅館業にも問題なく従事できるようしっかりと育て上げた。曾祖母がすごいスパルタだってのは初回にもいわれてましたね。そのスパルタというのが、旅館業全般ではなく、今回のトンカツのように梅の出会う事象に対応できるようピンポイントで必要な技量を磨かせていた?

だとしたら、初回に感じた印象よりも、もっと緻密な組み立てがされてそうな漫画でありますよね。

大正から令和に帰ってきた梅。ここで、曾祖母に大正時代の話を聞くのか、どうなるのか。なんせ思いもしない展開です。ほんと、次のタイムスリップで梅が向きあうことになるできごとに対応すべく、なにか具体的なヒント、特訓、仕込みなどが提示されてもおかしくないですね。

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