
川原泉は、私にとっての弱点みたいなものです。素朴でシンプルで淡々とした漫画なんだけれども、読むときっと泣くんです。花ゆめ時代の名作『笑う大天使』はいうに及ばず(特に第三巻が利くんです)、長編にせよ短編にせよ、心にしみる名作ぞろいで、川原は私の急所です。
もし無人島にひとつだけなにか持っていけるならなにを選ぶかという陳腐な問いがありますが、私は迷わず川原から一冊を選びます。
ブレーメン IIが始まったとき、川原のSF好きは知っていましたが、正直あんまりだなと思いました。なんだか雰囲気が固くなって、昔のような奔放さがなくなった。内向きに閉じこもったみたいな意固地さみたいなのを感じたのでした。ところが、今日最終巻を読んで感動の嵐。いやこの感情は五巻だけのものでなく、これまで読んできた途中巻においても同じでした。川原はSFに寓意を持ち込んで、物語を全人類的な大きさにまで広げて、しかもつつましやかにそれを閉じたのです。
だから私はここに川原を見誤っていたと告白せざるを得ません。私は、私の意固地な評価でもって川原を過去の人と決めつけて、色眼鏡を掛けて読みはじめていた。けれど、そうした意地悪な目、冷たい心で対したというのに、川原の物語はするりと滑り込んでくるように私の心の深くに通って、私は、昔あれほど偏見は自分の料簡を狭くすると思い知ったつもりだったのに、いまだかたくなであった自分を恥じます。
川原の旧作が個々人の仕合せと生き方を描いていたのだとしたら、ブレーメン IIは個々人の仕合せを超えて種や思想、信条を超えた普遍の仕合せに思い至らせるまでに深まっています。
ブレーメン IIはSFにして寓話にして、不変の価値を持つマスターピースです。世界に問うて恥じないものと私は信じます。
若い人はご存じないでしょう。さだまさしは昔、吉田政美と一緒にグレープというフォーク・デュオを組んで、一世を風靡しました。まさにアイドルそのものとしか表現しようのない人気でして、若い娘さんたちはさださんの魅惑のぼそぼそしゃべりに黄色い声をあげたのです。
中世イタリアの修道院で起こる殺人事件をめぐる物語ですが、ただのミステリー仕立てではないところがさすが。謎を解く過程で明らかになるのは、事件のあらましというよりもむしろ、中世という時代とその精神でありましょう。
ポール・サイモンというのは、サイモン&ガーファンクルでギターを弾いている人です。非常にシンプルでけれど情感あふれるギター。彼の出現によって、アコースティックギターの世界は様変わりしたのだそうです。そのポール・サイモンがギター一本で弾き語りする。これは聴かねばならないと思ったアルバムでした。
ちょっと懐かしい雰囲気漂うフランスのコメディ・ミュージカル。内容は他愛もない片思いものですが、一昔前の少女漫画にはまれる人なら充分楽しめるかと思います。幻想の女性に焦がれる男は、自分の目の前にいるその女性アンナに気付かず、対してアンナもその男に恋心を抱きながらも、—内容を話してしまうなんて野暮なことはよしましょう。
カードキャプターさくらのオープニングテーマだったので、その方面の方には有名な曲でありましょう。私はこの歌が大好きです。
イギリスはブリテン島とアイルランド及びその周辺に伝承される民謡を蒐集した曲集。内容は非常に充実していて、多彩という形容がぴったりです。
ペンタングルというのはイギリスのグループで、六十七十年代に活動してました。ジャンルとしてはフォーク、トラッドといわれるような昔の音楽、民謡なのですが、それがものすごく美しくて、あんな音楽を歴史に抱えているイギリスに嫉妬します。
