2024年4月25日木曜日

『まんがタイムきららフォワード』2024年6月号

 『まんがタイムきららフォワード』2024年6月号、昨日の続きです。

『球詠』

紅白戦を通じて描かれる珠姫の心情が、切々としてしみるエピソードとなりました。

皆の仕上がりがいいのでと行われることになった紅白戦。4人ずつチーム分けされた名簿を見せられ、残りは斉藤小町が決めるというやり方。その初期メンバーにてヨミと珠姫が別チームに入れられていたのがドラマのはじまり。珠姫にしていずれヨミが自分ではない捕手を相手に投げる日がくることを予感させ、ちょっとアンニュイさ漂わせる珠姫なのでした。

その珠姫がですよ、実際にヨミを相手にまわしてプレイしてみて、いろいろ気づいていくところがあったのでした。今野球をしていて楽しいのは、ヨミと一緒だからだろうか。とか、自分と組んでいないヨミの中に、自分との野球が息衝いていると感じるところがあったり。とか。そうしたひとつひとつが珠姫の野球との向きあい方、ひいてはヨミに対する気持ちを明らかにさせて、この漫画の野球を通じて描かれるものが、勝負ものとしての面白さだけではない、よりもっと広がりを持って展開される思いや気持ちの物語でもあるのだということを感じさせてくれて、感無量でありました。

深く広がりを持つ物語。素晴しいと感じます。

『花唄メモワール』

足の傷も癒えてきた藤野。今は芸妓としてはお休み期間なので、暇を持て余しているからと、仲居の仕事を手伝ってくれることになりました。

梅とペアを組み、いろいろ教わりながら仲居の仕事に触れていく藤野。この藤野の経験が、読者にとっても仲居の仕事を知るきっかけを作ってくれるところ、とてもよく、そして同時に、梅の一日、この子の周囲にいる人たちのこと、その関係も知っていくことができるのは楽しい仕掛けでありました。そして知る、藤野の優秀さ。よくできたお嬢さんなんだなと思わされる、そんなイベントめいた仲居体験。とても新鮮だったのです。

よかったのが、藤野の芸妓としての知識、経験が役に立つところ。芸妓の呼ばれているお座敷に入るタイミングがわからないという梅をよくサポートして抜群。そしてこの体験が梅に芸妓の仕事を知りたいと、もっと覚えたいと思わせる。この相手に自分を知ってもらうはずの一日が、その終盤にして自分が相手のことを知りたいと実感させる意識の切り返し。とても見事だったと思います。

そして深まる梅と藤野の仲、絆、これもまたよかったのでした。

『しゅがー・みーつ・がーる!』

ありのままのあなたが一番すてき。美都との交流、美都の言葉が自分自身を認める力になってきているカンナです。とはいっても、まだまだ自分のありのまま、甘味が好きで、かわいいものが好きということを美都以外に知らせることはできていないのですが、それでも自分の好きなファンシーキャラクターのコラボカフェにいってみようと思えるほどには前進できている。これもやはり美都がいてくれてこそでしょう。美都を誘えばきっと応えてくれる。その確信があって、切り出すことができた。美都に甘えてずるい、なんてこと思ってるカンナですけど、自分の弱味も意識して、その上で相手に甘えられるの、きっと信頼で、近しさ親しみのあらわれだったと思うんですね。

今回は、こうしたカンナの美都にだけ見せる弱さや甘さがあって、そしてドキドキの放課後タイムが見どころでありました。

放課後の空き教室。ふたりでコラボカフェの予約を入れる。先着順で決まるため、毎回相当な争奪戦。ふたり予約開始の直前に落ち合って、そこからはじまるドキドキの予約タイム。時間ぴったりに、それぞれスマホでサイトにアクセス。まったく繋がらなくて、よしいけると思って開いたらもう埋まってしまっているなど、難航して苦戦して失望して落胆した果てに確保がかなったあの瞬間の高揚! これは本当によかったですね。ええ、ふたりの気持ちの高まりがこちらにも伝わってくる。いい盛り上がりだなあと思ったら、まさかここからさらにもう一段盛り上げてくるだなんて、まさしく驚きの展開でした。

いやもうほんとに素晴しかったです。

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