2008年6月4日水曜日

Real Clothes

 手帳を見れば、5月19日のメモ書きに、Real Clothes 4, 達也、あれは最低だと書かれていて、そう、達也、あれは最低な男です。病院の待合で連載を追っていた時から、この糞のような男はー、とむかむかしていたんですが、単行本で読むと格別ですね。だって、最初にいっていたことと全然違うんだもの。最初は、仕事がんばれ、応援するよみたいなこといってたくせに、具体的に結婚が見えはじめると、仕事やめてくれ、俺についてこい、そして極め付けはこれ、どうせやめる仕事だろ 適当にしろよ! 殴りまではしなかったものの、手を上げて鉢植え壊してこの台詞。第23話と第24話の間で、アブダクションでもあって改造受けでもしたのか!? と思うほどに人が違ってしまって、いやあ、びっくりしましたね。けど、21世紀になっても、まだこうした台詞、場面が登場する女性コミックの世界。それはつまり、こうした現実があるということなんでしょうね。

でも、実際の話、どうなんだろうとも思うんですが。というのは、あんまりプライバシーに関わることを書くと私の命が危うくなるのですが、うちの姉の話、共働きなんですね。仕事やめるという選択肢もあったらしいんですが、けれど現実問題として、妻は専業主婦というのは、夫側がよほど恵まれた条件でないと成立しない形態と思われて、実際どうなんでしょう。私のまわり、共働き、多いんですが、ほんと、どうなんでしょう。伝え聞くのも、結局家事は私かよ、みたいのが多いんですが、どうなんでしょう。まあ、このへんはどうでもいいや。問題は、達也だな。ああ、もう、綺麗さっぱり切れてしまえ。いったいなにを迷う必要があるんだっていう話です。やつとの関係に意味があるとすれば、それはただ二人の間に流れた時間、共有された経験、いわば歴史のみであって、それがここまでないがしろにされるというのなら、結婚後の不毛は目に見えている。こういう男はだな、結局は都合のいい、自分の理想どおりの女が好みなんであって、ちょっとでも自分の思ったとおりでなくなると、こんなはずじゃなかった、君がそんな人だっただなんて思いもしなかったよ、そんなこと言い出しやがるんだよ。なにいっていやがんだ、お前が勝手に夢見たんだろうよ。ありもしない妄想にとりつかれてたのはお前だろうよ。こういう相手と付き合うと、早晩相手の理想との戦いに疲れ果てることになる、相手の押し付けてくる一方的で勝手なイメージに辟易するというのがパターン。はい、私も気をつけます。こういうことをいっている私からが、相手に勝手なイメージを押し付ける傾向をもっています。

『Real Clothes』第4巻は、約束不履行男達也との別れの巻であります。正直、私はこのへんの流れにかなりげんなりしていたから、この破談は大歓迎。よくやった田渕! けれどこういう反応を返すあたり、私はこの漫画がターゲットとする層には含まれていないんだろうなという気がしまして、だって恋愛と仕事、結婚と仕事を天秤にかけるという、女性にとっては大きな問題を、私は一も二もなく仕事だろうと、考えるまでもなく仕事だろうと、決めつけるがごとく結論づけているわけですから。そう、私は働く女性ものを読みたいんですよ。だから、達也のような男は敵でしかなくて、とりあえず早々に撤退お願いしたい。働きたい、よい仕事をしたい、という気持ちがあって、そこに普通ならあり得ないような絶好の舞台が御膳立てされて、そんな幸運のシンデレラそのもののヒロインが、恋愛の行方云々に足を引っ張られている状況、はっきりいって我慢ならん。こんな私ですから、この先、まだ恋愛の喪失を引き摺っているヒロインが、気持ちのもやもやを吹っ切り、エネルギーを取り戻して、仕事に邁進し、そしてそこでなにを実現するのかに期待してしまうんだと思います。間違っても田渕に恋愛感情をもって云々みたいにはならんでしょう。仕事をする女性としてのヒロインを見初める誰かが出てくる、こんな安易な展開もないでしょう。じゃあ、どうなるのか。仕事に生き、しかし仕事だけではない、仕事も私生活も充実した、そしてその位置をつかみ取ったのは、他でもないヒロインその人だ。そんなところに落ち着くことを期待しているってわけなのです。

待合室に提供されるYouは数ヶ月遅れなので、いま絹恵がどうなってるかはわからんのですが、いつまでもこのぐずぐずとした状況を引き摺ることはないでしょう。状況を乗り越え、力強く歩きはじめる。私はといいますと、その時を心待ちにしているのであります。

  • 槙村さとる『Real Clothes』第1巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社.2007年。
  • 槙村さとる『Real Clothes』第2巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社.2007年。
  • 槙村さとる『Real Clothes』第3巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社.2007年。
  • 槙村さとる『Real Clothes』第4巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社.2008年。
  • 以下続刊

引用

  • 手帳
  • 槙村さとる『Real Clothes』第4巻 (東京:集英社.2008年),71頁。

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