2007年8月3日金曜日

トータル・リコール

 貿易会社勤務のジョンソンは実に平凡なサラリーマン。同じことの繰り返される毎日に嫌気が差している、そんな男であったのですが、ある日メイドロボにいわれるままに訪れたトリップ・ムービー — 望みの夢を見せるという人気のアトラクションをきっかけに、失われた記憶を取り戻したのだった! それはかつての自分が宇宙をまたにかけて大活躍していた宇宙海賊であったという記憶だ! って、海賊じゃ『トータル・リコール』じゃないじゃん。ええ、このあらすじは寺沢武一の人気コミック『コブラ』であります。いやね、ついこの間から『コブラ』を無性に読みたくてですね、そうしたら通りすがりの古書店で全巻セット見付けたものだから買ってしまったんです。そしたらそんな展開で、『トータル・リコール』思い出してしまった。と、そんなわけなのです。

でもこれって、両方がP. K. ディックの『追憶売ります』を下敷きにしているってだけなんでしょうね。実際『トータル・リコール』はP. K. ディックを原案として膨らませたもんだっていいますから、こりゃ一度原作を読んでおかないといけないなあ、そんな気分になっています。

映画『トータル・リコール』は、アーノルド・シュワルツネガーが主演のアクションものであります。望みの夢を見せてくれるというアトラクション、リコール・マシンを使ったことをきっかけに、諜報員であったという過去を思い出してしまうんですね。美しい女性をともに、襲いかかってくる敵を蹴散らし、地球を飛び出し、火星にて敵組織の陰謀を暴き平和をもたらすという素晴らしい勧善懲悪ストーリーなのでありますが、これが実にアップテンポで痛快で面白かったのですね。テレビの洋画劇場やなんかで放送されれば決まって楽しみに見て、夢に落ちていく途中、好みの女性のタイプを聞かれたシュワルツネガーが、玄田哲章の声でみだら……という、そのシーンが忘れられない。って、いや、そこ全然見せ場じゃないですから。

見せ場はとにかく多かったと思うのです。自分の過去を取り戻した途端に襲いかかってくる敵、宇宙港での戦いなんて、持ち物検査のレントゲンに映された骸骨が戦ったり、あとアタッチメント使ったダイナミックな変装とかも印象的で、そしてラストの火星の変貌っぷりも楽しくて、まさにテラフォーミング。高校時分、地学の教師とこの映画の話して、極地の氷を使って酸素を作るという理屈はすでに議論済みだとか、けれどあの映画みたいな急激な酸素の行き渡り方はさすがにしないとか、SF談義みたいなことしたのもいい思い出です。

というか、そんなにふるい映画なんだ。改めて振り返ってみると驚くことがいっぱいです。

でもふるい映画でも、見たらきっと面白いんじゃないかなあ、なんて思います。なにしろ好きで何度も見た映画ですからね、きっと見れば、この映画を好きで見ていた時分のことまで思い出したりして、そうした楽しみ方もできるんじゃないかななんて思いもあったりして、けどそんなの関係なしにまた見たいものだなあ。一冊の漫画をきっかけにして、思い出が広がっているようですよ。

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