2007年2月14日水曜日

こどものじかん

   さすがに、限定版は買いませんでしたよ。私屋カヲルの『こどものじかん』第3巻には通常版の他に限定版もありまして、通常限定の違いはどこにあるかというと、限定版にはフィギュアがついてくる。あと、細かいところをいうと、表紙が違う(通常版では枕を抱いているところが熊のぬいぐるみに変わっている)のと、カラーピンナップ? が追加されている。問題はですね、この追加分にいくら払えるかでありまして、その差額は1,200円。ちょっと高いよねー、と思った私は通常版を選択したのでした。おそらくコアなファンは両方買うのでしょうね。けど私は、この漫画に対しては内容をこそ重視したく思ったので、限定版という作られた希少性に発するアウラにたいし対価を支払うのはやめておこうと考えたのです。

『こどものじかん』に関しては以前にちょっと触れたことがありますが、もちろんロリコンとでも勘違いされたらことだからだなんていうのは冗談で、というのも、この漫画の内容を知っている人から見れば、『こどものじかん』=ロリコンという単純な図式が描かれることはおそらくないだろうと思うからです。ませた女の子が新任男性教諭に過激なアタックを繰り返すという扇情的な描写は、意図的に持ち込まれているのでしょうが、こうした見せ方や煽り方を多用しながら、そのまた違った側面に読ませる部分を用意しているという多層感は、多様な読者層に働き掛けて引きつけるうまい手法であると思っています。

そうした構造を持つ漫画であるため、こうした場で語られる場合には、教師という職業に対する描写であるとかがクローズアップされることが多く、苛酷な労働時間、荒れる学級や子供との関係への苦悩等々、実際私が子供であった頃からすればこうした荒れ方というのは想像できないものでありますが、でも今はやっぱりそうなのかなあ。実は私も教員免許保持者で、中学ではありますが実習にもいって、そこで得た感じというのは、教師の力量によって教室の状況は大きく変わるというものでした。だから、『こどものじかん』を学校ものとして読むならば、主人公青木が同僚教師やほかならぬ子供たちとかかわりあう中で成長していくストーリーを期待するところなのであろうかなと思います。が、第3巻に収録された話、第20話なんかを見るかぎり、あんまり彼の成長は期待できそうにないなあ。なんて考える私は、実は教師という職業人にたいする憎悪に近い偏見を持っています。

第1巻では主に青木対りんという構図が濃厚でしたが、巻を重ねるにつれ、りんのバックグラウンドが徐々に明かされ、またストーリー上あまり重要な位置についていなかった人が表に出てくるようになってくるなど、関係性が徐々に複雑に、密になってきています。少しずつ明らかにされる各人の人間性や他者に向ける視線が少しずつ異なっているところが私には実に面白く感じられ、それは神経質で取っつきにくく描かれてきた白井教員と黒の繋がりであるとか、あるいは主役各でいえばりんとレイジの互いに向けられた視線のすれ違い。こうした、誰かが誰かに向ける視線、思いの明らかになり変化していくことが、これからの物語にどのように関わっていくのだろうと思うと、なんだかちょっと面白そうだと、そんな風に思ってしまうのです。

というわけで、すまんけど、青木教員はあんまり眼中になかったりする。りんを巡る物語を動かすための、ちょうどいい位置に置かれたアクセントみたいにしか見られなかったりして、いや、ほんと申し訳ない。宝院教員に対しても同様かも。あ、いや、ボサボサすっぴんどてらは最高だったと思っているのですけれども。

  • 私屋カヲル『こどものじかん』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2005年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第2巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2006年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第3巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第3巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年;特別限定版.2007年。
  • 以下続刊

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