2006年9月2日土曜日

小松ちゃん

豊田勇造の歌は実にじんと胸に染みるものが多いのですが、『小松ちゃん』もそうした曲のひとつです。私のはじめて買った豊田勇造のアルバム『振り返るには早すぎる』に収録されているのですが、この歌がやけに耳に残ってしまって、なにがそれほどに私に訴えたんだろう。おそらくは声、この人の声は叙情をうちにはらんで、まるで語りかけてくるみたいに感じて、そしてその語られる内容もよかったのです。

かつての恩人、小松ちゃんのことを歌っているのですが、その人がもう故人であることは一番最初に示されていて、後は出会ったときのことからが淡々とけれど切々と思い出語りするようで、すごくしんみりするのだけれどもけれど同じくらい温かい気持ちになれるのはなんでなんでしょう。伴奏はギター、そしてピアノがかぶさってくる。決して派手にはしない。でもぐうっと静かながらに盛り上がりを見せて、そして胸に迫る。まるで、知らないはずの小松氏を私も知っているかのように生き生きと感じられて、目を閉じればまぶたに浮かぶようで、それは豊田勇造の歌がそれだけ共感性に富んでいるということなんでしょうね。

これがライブにて歌われて、そしてこのアルバムに収録されて、私はライブででも聴いてみたかったなんて思います。ライブにはライブの雰囲気があって、それはアルバムを通してでも感じることはできるとはいえ、もちろんそのすべてに触れることはできません。私がライブででも聴きたかったというのは、私同様に小松氏を悼むようなそれで懐かしむような、そんな気持ちになっている人たちと同じ空気に浸りたかったということなのだと思います。

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