2005年1月8日土曜日

翻訳仏文法

  日本語一本で育ってきた私には、やっぱりフランス語というのは難しくて、なにしろ耳に入った言葉がすらすらすらと飲み込めるわけでなく、ましてや今やってるみたいに、次から次へとフランス文が湧いてきてなんてことはまずありえないわけです。辞書首っ引きで、一生懸命訳すんですね。そしたら絶対出てくるんですよ、いったいここはなにをいおうとしてるんだろうかって箇所が。直訳してもわからない、意訳しようにも意味がわからんからどうしようもない。うんうん唸っているうちに、ああこういうことかというのがわかってくることもありますが、じゃあそれで解決というわけじゃないんですね。今度は、どうしても日本語にはならない文章っていうのがあるんです。

こういう苦しみを味わったことのある人には、この本はきっと大きな助けになることだろうと思います。

そもそも私からして、この本がためになると思いますよって、友人から紹介されたのでした。でも上下二分冊で文庫としては高いですね、最初躊躇したんですが、買って読んでみたら、いやいやいや、むしろ安いくらいだと思いなおしました。この本の主目的は、フランス語をうまく日本語に翻訳する方法を考えるというものですが、けれどそれは日本語とは違うフランス語の発想に意識的になろうということでもありますから、仏作文にも役立つんです。

私、フランス人の先生とベルギー人の中学生と文通しております、メールで。また、ボランティアで仏文を和訳したりもしています。その折りにやりとりされる仏文、日本語翻訳文の質は、この本を手に取った頃を境に、くっきりと違いが出ているはずです。だって、私にだって違いがわかるくらいなんだもの。でも、おそらくその差を一番よくわかってくれてるのは、二人の文通相手だと思います。

さて、この本ですが、はっきりいって初級者向けではありません。フランス語の基礎的な部分、文法だとかいろいろな約束事だとかをクリアした人が読んで役立つものだと思います。というのも、たくさんの仏文例が提示されて、それに模範訳例がついて、そういう翻訳になる理由、背景が説明されるわけですから、その文例を自分でも読める、訳せる力がないと、そういうものなのねと、ただ通過していっておしまいということにもなりかねません。

だから、児童文学くらいなら辞書首っ引きで読めるよ、と、これくらいの人が読むのが一番いいんじゃないかと思うんですね。というか、私が今ちょうどそれくらいの段階にあるのでそういうんですが、少なくとも私は、更なるステップアップを図るためのよい試練だと思い取り組むことができたわけですよ。

私は本を主に電車で読むので、辞書を手にして訳しながら読むというのをしませんでした。まずは仏文だけを読んで、日本語になるよう努力してみて、その後訳例を見る。そのふたつを対照させながら、また仏文を読むの繰り返しだったので、いやあ、目茶苦茶時間かかりますね。三十分かけて一二節進めばいいほうですよ。場合によれば、おんなじ節ばっかりずっとにらんでる、おんなじ例文に引っかかったままちっとも動かないなんてことにもなります。

けれども、本当はじっくり腰を据えて、辞書を手にきちんと自分でも翻訳しながら、読み進めるべき本であると思います。なので、一度目は上澄みをさらうみたいにして読み終えましたが、二度目以降は、きっちりと覚悟を決めて取り組もうかと、そんな風に思っています。二度三度繰り返し読んで、訳して、フランス語と翻訳に対する経験値をあげる、そういう訓練のための本であると思います。

  • 鷲見洋一『翻訳仏文法』上 (ちくま学芸文庫) 東京:筑摩書店,2003年。
  • 鷲見洋一『翻訳仏文法』下 (ちくま学芸文庫) 東京:筑摩書店,2003年。
  • 鷲見洋一『翻訳仏文法』上 東京:筑摩書店,1985年。
  • 鷲見洋一『翻訳仏文法』下 東京:筑摩書店,1987年。

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