2020年8月24日月曜日

『まんがタイムきららフォワード』2020年10月号

 『まんがタイムきららフォワード』2020年10月号、発売されました。表紙は『観音寺睡蓮の苦悩』。メインどころ4人が揃って登場、なのですが、紫陽花、椿がイチャイチャしてる、それが睡蓮的にはなにより重要といった表紙にしあがっておりますよ。手前に椿、紫陽花。その後ろで振り返ろうとしている睡蓮。一番奥に、ちょっとふくれて丸まってる牡丹。これが手前から奥に螺旋描くようにぐるりと視線誘導していくのが実にいい。椿に抱き付こうとする紫陽花の動きを起点に、伸ばされた手が椿を経由し睡蓮に繋がり、睡蓮の回転を加えた動き、髪の流れが、手前と奥を分割しつつ、紫陽花からの流れを受けとり背後の牡丹へと向かわせるのですね。

今月は新作ゲストが1本です。

『仕事ができない彼女の理由』

お嬢様づきメイドとして令嬢の日常の世話をしている主人公。けれどその正体は、お嬢様を始末するべく雇われた殺し屋で、日々お嬢様の命を狙うものの、どうしてもその仕事が果たせない。なぜか? お嬢様を前にすると手が震える、動悸がはげしく打つ。これは精神攻撃!? とかいってますが、そこまで非現実的な言い訳しないといけないほど、好きになったこと自覚したくないのですか。

しかしなぜこの令嬢が狙われるのか。その理由が思いもしないものでしたよ。最初、依頼主が命を狙われるターゲットである令嬢本人と明かされた時は、これを一番最後に持ってきた方が落ちとして強かったんじゃないかななんて思ったものですが、むしろ仕掛けはここからで、なぜ命を狙わせるかというその理由。人を食ってみたいからなのか! お嬢様、妖怪の類なんですな。人の世界で暮らすために正体を隠し、人に害をなさないよういましめられている。けれど正当防衛なら話は別……、というので命を狙わせておいて、正当防衛成立からの返り討ちを狙ってるのか。迂遠な……、とはいうものの制度の穴を突くというのはこういうものなのかもですね。

この罠のような状況下で、なお令嬢の命を狙い、それでいて害することのできないメイドの最終的な開き直り。なかなかによかったと思っています。途中途中に状況を説明するキャプションについては、もうちょっと読者に判断を委ねる、信じて描写で伝えてくださってもよかったのではないかと思いました。きっとちゃんと伝わるものがあった、そんな感触ありますよ。

『球詠』

今回、めちゃくちゃ面白いですね。対外試合にて、これまでの練習の成果を確かめていくって趣向ですよ。熱の入った投球を見せる光。光の真価を引き出そうとするかのようなタマの要求に応えていくのもまた気持ちいい。返球でもわかるタマのすごさ。そうなんだ、返球が確かだとピッチャーの疲労をおさえられるんだ。すごいな。そんなこと、考えたこともありませんでした。

出塁のために左打ちを試してみている稜もまたいい感じ。出塁はできなかったものの、粘りに粘って8球投げさせた。選球眼がよくなってきているんですね。こうしてだんだんに成長の見える新越谷メンバーですが、そんな中、苦しんでいるのが希。左投手への苦手意識が拭えない。柳大戦を引きずっているのではないか、芳乃が見守っているその様子に、心配と信頼したい気持ちがうらはらに同居しているのを感じました。

希をライバル視する大分から遠征してきた夜明林工の先発ピッチャー、日高凪。この人が左投げなんですね。希へのリベンジを誓う凪ですが、精彩を欠く希に失望を隠せない。希の不調に凪の失望、そこにヨミがホームラン打っちゃうっていうのがほんと面白い。凪は大焦り、希は涙目っていうんですよ。ほんと、これがいいショック療法になるといいですね。ここで凪が登場してきたの、希の現状打破への布石だと思いたいんですよ!

『はるかなレシーブ』

決着しました。なるあやを相手に、1点差にまで追い上げるはるかな。このセット、絶対とると気迫も充分なふたり。この勝負の行方やいかに。続くラリーに、ページをめくる手は一瞬もとまらず、ぐいぐいと引っぱられるままに読み進めてしまいました。

それだけに、あの決着。一瞬、時間がとまったかのような感覚でした。

勝者、なるあや。正直、この展開もあるだろうと、予感? 覚悟? はしていたのですが、こうして実際に見せられると、こうきたかー! という感想よりも、ああー、負けるのかー、そうした気持ちの方が強く出てしまって、これは私自身意外でありました。それだけ、はるかなの勝ちを確信していたのかも知れませんね。

しかしこうして負けてなおはるかなには得るものがあるはずで、むしろ負けたからこそはるか、かなたふたりの得たもの、その意味はより際だつものと思うのですね。試合を終えて互いにかわしたありがとうの言葉。その意味するところは明確と思うのですが、次回、最終回にてより深まるなにか、感情、思いなどなど、あるのではないかと期待させられます。

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